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ビル管理にAIとBIMを利用するクラウドサービスの最新版、英Arupが発表

DIGITAL X 編集部
2020年6月3日

ビルなど建物の利用状況の把握や運用・保守業務を対象にしたクラウドサービス「Neuron(ニューロン)」の最新版を、英Arupが2020年6月2日に発表した。AI(人工知能)とBIM(Building Information Modeling)を活用し、建物全体の現状を示すデータを取得・分析することで、建物の利用者から管理者、設計者らの関連業務の軽減を図る。

 英Arupの「Neuron(ニューロン)」は、ビルなど建物を管理するためのクラウドサービス。建物の運用・管理システムや空調設備などから得られるデータを集中管理し、建物の運用に必要な情報をダッシュボード上で視覚化する。たとえば建物のオーナーや管理者であれば、建物の状況をリアルタイムに監視しながら、エネルギー消費を抑えたり屋内環境を改善したりが可能になる(図1)。

図1:Neuronのダッシュボード画面の例。ビル管理者はBIMによって建物内の状況把握できる

 現状分析に加え、搭載するAI(人工知能)の機械学習により、建物が消費するエネルギーの需要予測や、空調設備など建物が持つ各種システムの最適な制御、故障の検出・予測に基づいた予防的な保守なども可能にする(図2)。

図2:空調設備のデータをAIが学習して冷房負荷を予測することで、最適な運転設定を計算する

 Neuronは、建物の状況を把握するためにBIM(Building Information Modeling)データを利用しているのも特徴の1つ。これに建物に設置した各種センサーからのデータを組み合わせることで、建物全体の状態を仮想環境に映し出す「デジタルツイン」を生成し、現状の可視化やAIによる予測分析などを可能にしている。

 これにより建物のオーナーから管理者、設計者までにメリットを享受できるとする。オーナーは、複数棟を一括管理やテナントの入居状況の比較などにより、営業戦略の立案や資産価値の向上などに利用できる。

 管理者は、BIMにより建物の状況や各設備の故障・修理履歴、取扱説明書、仕様書などを一括管理できるほか、空調や電気の使用状況に合わせた改善策や運用コストの削減などが図れる。

 設計者であれば、実際の利用人数や設備の利用状況に基づく改修計画を立案したり、エレベーターや空調機、熱源機器、衛生設備などの過剰設計を防いだりが可能になる。

 Neuronの導入事例には、2008年の北京オリンピックの競泳会場である「北京国家水泳センター」がある。エネルギー使用量の最適化と予知保全により、最大25%のエネルギー削減に成功したという(図3)。

図3:2008年の北京オリンピックの水泳海上「北京国家水泳センター」での利用イメージ

 以後、クラウドサービスのNeuronは適時、機能が拡張・追加されている。直近では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対策として、建物の入口に設置したサーモカメラの映像を、周辺温度などによる影響を補正しながら体温が高い人を検出する機能を追加した。