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ローカル5Gや物流の最適化に量子コンピューターを応用した実証実験、MCPCが実施し最大約30%の最適化を確認

DIGITAL X 編集部
2020年6月9日

量子コンピューターを各種産業課題の解決に応用するための実証実験を、モバイル活用の推進団体であるモバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が実施し、その成果を2020年6月5日に発表した。ローカル5Gにおける事業者間のエリア管理や物流センターの人員配置などの最適化に対し、最大で30%程度効率が高まったという。

 モバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC)が実施したのは、量子コンピューターを産業分野で応用するための実証実験。2019年10月から2020年3月にかけて、組み合わせ最適化問題の解法に向くとされるアニーリングマシンを使って有効性を検証した。

 最適化問題として選んだ社会課題は、(1)ローカル5G事業者間のエリア管理、(2)物流センターにおけるタスクと人員配置、(3)小売り物流における施設配置と選択の3つ。通信、サブライチェーン、モビリティとサプライチェーンと業種・分野を分散させている。

 これら3テーマの実証実験の概要と成果をまとめたのが表1だ。

表1:3つのテーマにおける実証実験の概要と成果。①〜③は、上記の社会課題(1)〜(3)に該当する

 主な成果としては、ローカル5G事業者間のエリア管理では、事業者間のエリア競合調整を最適化問題にマッピングしたところ、20エリア・4事業者までのエリア管理を最適化できた。

 物流センターにおけるタスクと人員配置では、勘や経験によっていた配置計画を、状況変化に合わせてリアルタイムに作成することで、作業時間を従来比で20~30%程度短縮できる可能性を確認した。

 小売り物流における施設配置と選択では、店舗と倉庫のサービス提供能力の制約を考慮して組み合わせ最適化問題を解くことで、意思決定支援システムを構築できることが確認できたという。

 実証実験には、MCPCのプロジェクトメンバー9社が参加した。KDDI総合研究所、住友商事、野村総合研究所(NRI)、Jij、フィックスターズ、Quemix、日立製作所、NEC、富士通である。3つのテーマに対しチームを編成し実験に取り組んだ(図1)。

図1:実証実験における各テーマのチーム編成

 実験ではまず、社会課題を提案したベンダー(KDDI総合研究所と、住友商事、NRI)が、課題とコストの相関要素を抽出。次に、慶應義塾大学理工学部 物理情報工学科の田中 宗 准教授による定式化検討と全体監修のもと、量子コンピューティングの専門スキルを持つ企業(Jijと、フィックスターズ、Quemix)が定式化を実施した。

 そのうえで、コンピューターベンダー(日立と、NEC、富士通)が量子コンピューティングの検証環境を整備し、計算を実行した。こうした産学連携スキームにより、実質4カ月で実験を実施できたとしている。