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入居者の好みなどを“考える”ビルのためのラボ、米ジョンソンコントロールズがシンガポール政府と設立

DIGITAL X 編集部
2020年7月1日

ビルの環境制御システムなどを手掛ける米ジョンソンコントロールズインターナショナルが、イノベーションラボをシンガポール政府と提携し設立する。ビルの入居者の好みに合わせて環境設定などができる「コグニティブビル」の実現を目指す。2020年6月24日(シンガポール時間)に発表した。

 米ジョンソンコントロールズインターナショナル(JCI)がシンガポールに設立するイノベーションラボは、ビルの関連技術のデジタル化を進めるための研究開発拠点。建物や空間、入居者の行動といったデータをAI(人工知能)などで分析し、入居者の好みに合わせた空調管理などを実現する。

 ラボの開設においては、シンガポール経済開発庁の支援を受け、5000万シンガポールドルを投資する。2020年9月末までの開所を予定し、今後4年間で100人規模にまで拡大する計画だ。

 イノベーションラボは、研究開発に当たり4つの戦略を掲げている(図1)。

図1:シンガポールに開設する「イノベーションラボ」が掲げる4つの戦略

 第1の戦略は、現地の主要な研究機関と提携し、ソフトウェアエンジニアリングと製品開発における革新を図ること。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI、エッジデバイスなどを対象に、自社が持つ空調設備や照明、セキュリティなどに関する技術を活用する。

 第2の戦略は、都市開発事業者やビルオーナーと協力し、ESG(環境・社会・ガバナンス)評価を高める。エネルギー効率の改善やビルの資産価値の向上を図るために、入居者の好みを理解・予測し、空間の利用パターンを認識して環境を制御できる「コグニティブビル」を開発する。

 コグニティブビルの実現には、JCIが提供するビル向けのオープンな基盤や、消費者向けのウェアラブル端末、ネットワーク機器のほか、位置情報データやビルの状況を表すデジタルツインを対象に高度なアルゴリズムを適用するシステムを開発する。

 第3の戦略は、ライフスタイルやフィットネス、スマート家具に関するデータポイントを網羅するエコシステムの構築である。集積したデータは、ビジネススペースやパーソナルスペースの設計に利用する。

 たとえば、フレキシブルな家具を用意したスペースを、プライベートなビデオ会議用の空間やコラボレーションに適したラウンジにする。自然光を模した人工照明も利用する。

 第4の戦略は、各種専門機関との連携だ。地域の不動産のレジリエンス(回復力)とサスティナビリティ(持続可能性)の向上を支援する新しいアプリケーションを提供。併せて、コグニティブビル分野における専門的なサービスの提供基準を設定する。

 これらの戦略のほかラボでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大後の世界における安全性とソーシャルディスタンスの確保など、新たな社会的標準に対応するための非接触型アプリケーションの拡大にも寄与したい考え。そのために、自律型自動化技術や音声認識技術を活用した種々のシステムを開発する予定である。