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ジョブ型を導入したIT部門で2025年までに効果を得られるのは10%どまり、ガートナー ジャパンが予測

DIGITAL X 編集部
2021年4月12日

コロナ禍で関心が高まるジョブ型組織(雇用)。だが、日本のIT部門がジョブ型を導入しても2025年までに効果を得られるのは10%にとどまる--。こんな予測をガートナー ジャパンが立てている。効果を得るための条件を満たすのが難しいのが、その理由だ。解決策は、従業員へ提供できる価値の提案(EVP:Employee Value Proposition)だという。2021年3月22日に発表した。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組むための人材不足が指摘されている。加えてコロナ禍にあっては、ジョブ型組織またはジョブ型雇用への関心が高まっている。リモートワークの導入が進むなかで、社員の業務を明確化し管理を容易にしたいというニーズが背景にある。

 しかし、ガートナー ジャパンは、日本のIT部門がジョブ型を導入しても、2025年までに効果を獲得できる組織は10%にとどまると予測する。ジョブ型が機能するための条件を満たせるIT部門は少ないとみるからだ。

 満たすべき条件としては、「役割が明確に定義できること」「役割が固定的で変化が少ないこと」「業務の進捗と成果を可視化し共有できること」「IT部門がユーザー部門と対等の関係にありプロジェクトの優先順位を決められること」「CIO(最高情報責任者)が人事権を保有していること」「ジョブの変更に伴う解雇が可能であること」「従業員の自律性が高いこと」などを挙げる。

 一方で、IT人材市場の逼迫状況が緩和される見込みはない。そのため日本企業の50%が2023年までにIT/デジタル技術者の獲得に向けたを意識したEVP(Employee Value Proposition:従業員価値提案)を作成すると予想する。

 同社の調査によれば、求職者は、給与や待遇だけでなく、どのような環境で、どのような人たちと働くのかなどを比較検討している。優秀な技術者の獲得に成功している企業には、組織が掲げるミッションや所属メンバーの働きぶりといった内状を広く公開しているという特徴があるだけに、EVPを明確にすることが不可欠になってきている。

 EVPの設定は、従業員が重視する項目と満足度を定期的に計測できるため、既存の従業員の管理にも良い効果をもたらすと考えられるとしている。

 EVPにより従業員エンゲージメントを強化できれば、従業員の働く意欲が向上し、結果的にパフォーマンスも上がるという。

図1:適切な従業員エンゲージメントが従業員の意識とパフォーマンスに与える影響

 そのため日本の上場企業の50%が2025年までに、DXに取り組むことによる「従業員幸福度の向上」を非財務情報であるESG(環境、社会、ガバナンス)開示情報に含めるようになると予測する。優秀な人材が幸福を感じながら長く勤め続けられる仕組みが企業価値の長期的な成長には不可欠だと投資家が考え始めているためだ。

 ディスティングイッシュト バイス プレジデントでガートナー フェローの足立 祐子 氏は「自社に適した人材をそろえられるかどうかがDXの成否を決定すると言っても過言ではない、CIOは、IT部門のみならず、企業全体のIT人材戦略の立案と実行に、より積極的に関与すべきだ」と提言している。