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地方自治体を対象にしたデータ流通のための基盤サービス、エクスポリスが提供へ

DIGITAL X 編集部
2021年4月16日

地方自治体がデータに基づいて地域課題を解決するための基盤サービスのベータ版を、データ流通事業を手掛けるエクスポリスが2021年8月から開始する。複数の自治体間での情報共有基盤としても利用できるという。基盤サービスは、東京電機大学知的情報空間研究室と日本IBMと共同で実証実験を進めてきた。2021年3月29日に発表した。

 スマートシティのためのデータ流通などを手掛けるエクスポリスが提供する「Anastasia」は、地方自治体が地域内でデータに基づいて課題解決を図るための基盤サービス(図1)。ベータ版を全国に1724ある基礎自治体(市町村)を対象に無償で提供する。地域課題の解決策の策定から導入までの期間や人的コストの削減が可能になるという。

図1:「Anastasia」の活用イメージ

 Anastasiaが提供するのは、データ流通のための仕組みと、そのデータを活用するための知見やアプリケーション、各種サービスを売買するためのマーケットプレイスの機能。対象データは、農林水産から、交通・モビリティ、環境・エネルギー、防災、まちづくりなど、自治体が取り組む分野を幅広くカバーし、課題解決で連携する民間企業などへのデータ提供にも対応する。

 マーケットプレイスでは、自治体向け施策を提供する地域公社や民間企業などとのマッチングから施策の売買までをカバーする。自治体が独自に取り組んだ施策のノウハウの共有や販売、過去に採用した施策の評価を得ることもできる。

 Anastasiaは、東京電機大学知的情報空間研究室と日本IBMと共同で開発してきた。その過程で長野県小谷村において2020年4月から9月まで実証実験も実施した。

 棚田の水回りの管理では、水田の水位をセンサーで測定しAnastasiaで管理・可視化した。結果、当該業務において1日当たり約30分ほどの時間削減効果を得られた。台風発生時などの危険の回避もできた。

 天候データ(The Weather Company製)を加味した稲熱病の予測システムでは、気候変動に伴う稲熱病の発生を約80%の精度で予測した。予測に基づき対応策を実施でき、結果として収穫量が向上した点が評価されたという。

 鳥獣害に対した取り組みでは、罠にセンサーを設置することで、約20人が所属する猟友会が実施している罠の見回りにおいて毎朝1時間の短縮が図れたとしている。

 2021年1月からは、さいたま市横瀬町における実証実験もエクスポリスと東京電機大学が取り組んでいる。経済産業省と内閣官房が提供するデータを活用した地域分析機能と、解決策へのフィードバック機能、ユーザーインタフェースを検証し、自治体間での解決策や解決ノウハウの共有手段としての有用性を評価する予定だ。

 また、モビリティ関連サービスを地方自治体が活用するための施策も強化する。そのため共同開発にマクニカが参加し、同社の自動運転技術を活用した「Macnica Mobility Data Platform」とAnastasiaの連携などを図っていく。地域の公共交通機関網の補完およびCO2排出量の削減といった課題に対応する。

 エクスポリスは、Anastasiaを使った地域課題の解決プロセスに関心のある自治体、および自治体へのソリューションの検証・提供に関心のある企業を広く募集していく。