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設備診断・水質予測などが可能な上下水道の運営支援サービス、日立が開始

DIGITAL X 編集部
2021年4月27日

上下水道の設備診断や水質を予測するサービスを日立製作所が2021年4月12日に開始した。上下水道事業の運用・保全業務などを支援するクラウドサービスの新機能として提供する。同日に発表した。

 日立製作所の「上下水道事業クラウドサービス O&M支援デジタルソリューション」は、上下水道事業における運用・保全業務などを支援するクラウドサービス。今回、(1)設備状態診断、(2)水質予測、(3)プラント運転支援の機能を追加した。

 いずれもAI(人工知能)やアナリティクスの技術を使って、データに基づいて業務の効率化を図る。すでに国内の複数プラントで実証試験による性能を確認しているという。

 設備状態診断は、ポンプやブロワーといった設備の運転データから運転状態が正常かどうかを診断する機能(図1)。不具合などの状態変化を早期にとらえることで、故障に伴う損失コストや整備間隔の延長などによる保全コストの削減を可能にする。

図1:設備状態診断機能の概念

 利用に向けては、過去の運転データをAIシステムに事前学習させ、正常時の設備運転データと実際のデータを比較することで状態変化を検知する。日立が運用を受託している浄水場では、診断結果を日常点検に反映し、そこから点検を強化するポイントを変えながら運用している。

 水質予測では、ディープラーニング(深層学習)技術を用いて、過去の運転実績データと現在の天候・水源などの環境条件から、数時間先の原水の状態や処理水の水質を予測する(図2)。熟練者のノウハウや判断に依存せず、客観的な運転条件の設定を支援する。

図2:水質予測機能の概念

 実証試験では、降雨や渇水の際に、原水濁度や電気伝導率の予測値が、取水運転の調整や薬品注入を決定するための判断材料として活用できることを確認したとしている。

 プラント運転支援は、水の需要予測や処理場の運転計画を提案する機能。運転員の知識や設備運用条件などのノウハウ・判断をAIシステムが学習し算出する(図3)。

図3:「プラント運転機能」の概念

 実証実験では、水量や水圧、配水池水位の許容範囲、所定時刻での目標値などの条件をAIシステムに学習させ、配水ポンプの運用を対象に運転計画を作詞した。結果、算出した24時間後までのポンプやバルブなどの操作時刻と操作量のガイダンスに基づいて操作すれば、適切な運用が可能になることを確認できたという。

 3つの機能のほかに今回、データの見える化機能も追加している。これによりデータの可視化に加え、最新データの検索やトレンド表示、ダウンロードなどの操作速度を高めた。従来は、多くのデータから必要な情報を収集・整理するために時間を要していた。

 さらに2021年中には残塩管理機能も提供する予定だ。適切な水質での安定供給に向け、配水池や給水栓における残塩の目標値を満たすための塩素剤の注入率推奨値を算出する。

 近年、国内の上下水道事業は、設備の老朽化に伴う維持・更新のための追加投資や、人口減少に起因する事業収入の減少などにより、事業運営のさらなる効率化が求められている。

 日立は、水事業における制御・運用技術などのデジタル化によって、人や場所に依存しない高効率で安定的な運用・保全業務の実現を支援したい考えだ。