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衛星画像から世界の水田域を判定するプロジェクト、DATAFLUCTが精度8割に

DIGITAL X 編集部
2021年5月17日

衛星画像から、アジア6カ国の水田域をモニタリングするプロジェクトにデータ分析関連ベンチャーのDATAFLUCTが取り組んでいる。世界規模で水田をモニタリングし、環境に負荷を与えるメタンガスの排出量把握を目指す。2021年4月8日に発表した

 DATAFLUCTは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)発でビッグデータ分析さーびすなどを開発するベンチャー企業。現在、衛星画像を基盤とした水田域のモニタリングプロジェクトに取り組んでいる。その第1フェーズとして、水田域を約80%の精度で判定できることを確認した。

 水田域の抽出対象にしたのは、インド、ベトナム、インドネシア、タイ、フィリピン、日本の6カ国から選定した9箇所で5キロメートル×5キロメートル四方のエリアだ。6カ国が位置するモンスーンアジア地域は世界的にも雨が多い地域である。

 今回、光学画像(Sentinel-2衛星)と、SAR画像(Sentinel-1衛星)を組み合わせ、機械学習によるモニタリングを目指した(図1)。光学画像は、光学センサーで太陽光を観測し、地上から反射・放射される強度の違いで物体を識別するため雲などの障害物がある場合や、太陽光のない夜の時間帯には物体を検知できない。SAR画像はマイクロ波の跳ね返りを基にするため天候や時間帯に左右されない。

図1:衛星画像から水田域を抽出した例

 結果、約80%の精度で特定エリア内の水田域を判別できたという。他地域にも適用できるよう、機械学習のモデルでは普遍性を高めた。SAR画像の時系列情報を活用し、どの地域にも共通して水田域を判別可能な変数を特定することで、地域差を吸収している。

 今後は、本プロジェクトで得た水田領域に関するデータを、CO2モニタリングサービス「DATAFLUCT co2-monitoring.」に反映させる予定だ。co2-monitoring.は、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の衛星データに、経済活動や気温、排出量などのデータを掛け合わせ、CO2の時系列分析からエリアごとのCO2濃度と経済成長の関係性を示唆するサービスである。

 今回のプロジェクトは、国立環境研究所の依頼を受けたもの。稲作において、水がはってある水田はメタンの発生条件が揃っている。メタンは、温室効果ガスのうち、CO2に次いで重要とされる物質で、酸素のない状態で有機物が分解されることで発生する。

 国立環境研究所は、地球温暖化問題への取り組みの一環として、メタン排出を減らすために水田を効率的にコントロールする研究を進めている。そのためには、水田におけるメタンの吸収・排出量を正確に把握することが重要になる。