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行政や政策の課題に直結する10のテクノロジー、ガートナーが提示

DIGITAL X 編集部
2021年5月17日

政府機関のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けて、政府機関のリーダーが取り組むべき戦略的なテクノロジーのトレンドを米調査会社のガートナーが提示している。DXを加速し、公共サービスを最適化・変革する可能性があるという。2021年3月29日に発表した。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが世界中のデジタル化を加速させた。各国政府機関のリーダーも、公的機関の信頼性、俊敏性、回復力をデータとテクノロジーを使って高めるという新たな課題に取り組み始めた。日本政府も2021年9月、デジタル庁を新設する。

 そうしたなか米調査会社のガートナーが、行政機関のリーダーが取り組むべき戦略的なデジタルトレンドとして10のトレンドを挙げている。いずれもが、行政や政策の課題に直結し、公共サービスを最適化・変革する可能性を持つとする。このトレンドを知ることで、テクノロジーへの投資根拠やタイミング、優先順位を確定できるとしている。

トレンド1:レガシー・システムの近代化の加速

政府機関は、何十年も前から使用してきた古い基幹システムなどが持つ制約やリスクに対処し続けていた。しかしパンデミックに関連する課題により、システムを刷新するコストよりも、古いシステムを保持することで生じるリスクのほうが大きいと判断する場合が増えている。

予測:

2025年までに政府機関の50%以上が、遺物と化した基幹系アプリケーションを刷新させる

トレンド2:アダプティブ・セキュリティ

安全と危険の間に境界がないものとして捉え、常に進化するサイバー脅威を予測して対応するために、継続的にアプローチする。

予測:

2025年までに政府機関のCIO(最高情報責任者)の75%は、IT部門以外のセキュリティについて直接責任を担い、オペレーショナルテクノロジー(OT)やミッションクリティカルなテクノロジーの環境も対象になる

トレンド3:サービスとしてのソリューション (XaaS)

あらゆる種類のビジネス/ITサービスを、クラウド環境のサービスとしてサブスクリプション(購読)として取得する。閉じたシステムとは異なり、デジタルサービスを取得するための時間を短縮し、都度の拡張を可能にする。

予測:

2025年までに、政府機関の新たなIT投資の95%がXaaSに投じられる

トレンド4:サービスとしてのケース・マネジメント (CMaaS)

決められたことにしか対応できなかった古いシステムを、変化するビジネスニーズに応じて迅速に組み立て、分解・再構成できるモジュール型プロダクトに置き換える。

予測:

2024年までにCMaaSのアーキテクチャーを導入している政府機関は、導入していない機関に比べ新機能の実装が少なくとも80%速くなる

トレンド5:市民デジタル・アイデンティティ

民間人が使用できる、政府がデジタルで提供する個人認証機能。政府サービスへの参加とアクセスを容易にする。そのためのシステムは急速に進化しており、政治課題としても重視されている。

予測:

2024年までに、真にグローバルでポータブルな分散型アイデンティティ標準が市場に登場し、ビジネス、個人、社会、アイデンティティが不明なユースケースに対応する

トレンド6:コンポーザブル(組み換え可能な)ガバメント・エンタプライズ

組み換え可能な設計の原則を採用する政府機関のこと。政府機関の既存のサービスやシステム、データの管理手段は部署ごとに縦割りになっていることが多く、デジタル社会で急速に変化するニーズに適切に適応できない。

予測:

2023年までに、政府機関に製品/サービスを提供するテクノロジー企業の50%が、組み換えが可能なアプリケーションを提供するようになる

トレンド7:プログラムとしてのデータ共有

常に各所管でデータを共有することが目標になる。これまでは児童保護案件など特別なケースに限られていた。

予測:

2023年までに政府機関の50%が、データの構造/品質/適時性の標準を含め、データ共有のための正式な説明責任構造を確立する

トレンド8:ハイパーコネクテッド公共サービス

政府機関全体で複数のテクノロジー、ツール、プラットフォームを利用し、可能な限り多くのITプロセスを自動化する。

予測:

2024年までに政府機関の75%が、機関全体を対象に3つ以上のハイパーオートメーション・イニシアティブを開始または進行させている

トレンド9:マルチチャネルの市民エンゲージメント

個人が、それぞれ好みのアプローチツールを選び、行政への直接的な参加を可能にする。

予測:

2024年までに政府機関の30%以上が、エンゲージメント指標を使用し、政策や予算決定への市民参加の規模と質を追跡する

トレンド10:アナリティクスの運用化

政策の各段階で、AI(人工知能)、機械学習、分析を採用し、意思決定の効率性、有効性、一貫性を高める。意思決定者が業務上の意思決定をリアルタイムに下し、市民の満足度向上を支援できる。

予測:

2024年までに、政府機関がAIとデータアナリティクスに投じる投資の60%が、リアルタイムでのオペレーション上の意思決定や成果に直接影響することを目指すようになる