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駅周辺の行動変容を促すための都市シミュレーター、東大とソフトバンクが研究開始

DIGITAL X 編集部
2021年5月19日

地域の最適化や活性化に向けた人々の行動変容を促す研究を東京大学とソフトバンクが開始した。駅や周辺施設で人々に情報やクーポンを提供し新たな人流を創出する。研究には、小田急電鉄やスマートシティ関連技術を開発するグリッドが参加する。2021年4月28日に発表した。

 東京大学とソフトバンクが研究開発する「次世代AI都市シミュレーター」は、人々の流れや行動の予測に基づき行動変容を促し、新たな人流を創出するもの(図1)。駅や周辺施設での混雑緩和と購買促進の両立や、交通の最適化、災害時の避難誘導などに関わる技術の開発と社会実装を目指す。両者は、AI(人工知能)技術の研究機関「Beyond AI 研究推進機構」を設立している。

図1:「次世代AI都市シミュレーター」により、人々の流れや行動の分析と予測に基づき新たな人流を創出する

 研究期間は2021年4月から2022年9月までを予定する。その間に、駅などへの来訪者に対し、それぞれが持つスマートフォン用アプリケーションに各種情報やクーポンを届けたり、施設内のデジタルサイネージに情報を表示したりする。

 そのためのシミュレーションを実施できるよう、都市空間をネット上に再現するデジタルツインを構築する。人流や交通、購買、来訪者の属性といったデータを使い、人々の流れや行動を可視化・予測しながら、人流誘導アルゴリズムに基づいて来訪者の行動変容を促す。

 ソフトバンクが次世代AI都市シミュレーター全体の設計・開発を担い、東大が人流誘導アルゴリズムを開発する。データの処理基盤には、イベント駆動型アプリケーション開発プラットフォーム「Vantiq」(米Vantiq製)を使用する。

 研究開発には、小田急電鉄と都市の最適化技術などを手がけるグリッドが参加する。小田急電鉄は、MaaS(Mobility as a Service)への取り組みや沿線の街づくりで得た知見を提供し、グリッドはデジタルツインなどの研究開発環境を構築する。

 デジタルツインとしては、小田急線海老名駅と周辺エリアを対象にする(図2)。小田急線海老名駅は1日の乗降客数が10万人(2020年度の1日平均)を超える。同駅と周辺地域を研究対象にすることで、都市におけるAI技術活用の有用性を検証する。

図2:デジタルツインを構築する研究対象予定エリアである小田急線海老名駅および周辺施設

 研究では、地域における多様なデータを活用し、人流の誘導に、エネルギーや物流の効率化などを加え、環境負荷の軽減に貢献できる都市づくりを検討するとしている。