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プライバシー管理などAIの信頼性を高める機能、米IBMがWatsonに追加

DIGITAL X 編集部
2021年5月24日

AI(人工知能)システムに対する信頼性を高めるための機能を、米IBMがAIサービス「Watson」に追加した。プライバシー管理や予測計画の説明可能性などで、ガバナンスやコンプライアンスの要件にこたえる。2021年4月21日(米国時間)に発表した。

 米IBMの「Watson」は、同社のAI(人工知能)関連サービス。このほど、AIのモデルやデータに対する信頼性を高める機能を追加した。意思決定などへのAI技術の利用が広がるなかで、AIシステムの制御や説明性、精度の向上、リスクの軽減、プライバシーとコンプライアンス要件の順守などを求める声が強まっていることに対応する。

 IBMが委託し2019年12月に実施した調査によれば、AI専門職の84%が、「透明性と倫理的な枠組みをもってデータとAIモデルを構築・管理・使用している企業のサービスを消費者が選択する可能性が高い」とみていた。同時に82%は、「データやAIモデルに関するバイアス(偏見や差別)などの問題が、所属する組織に悪影響を及ぼしている」と回答している。

 AIシステムの信頼性は、企業の顧客対応力を高めるともいう。例えば独ルフトハンザドイツ航空はIBM Watsonを使って、信頼性の高いデータとAIの基盤を構築することで、ワークフローの信頼性を高めている。業務改善による競合優位性のほか、CX(Customer Experience:顧客体験)が改善され、従業員の能力も強化されたとしている。

 Watsonに今回、追加する機能は、(1)データのプライバシー管理、(2)予測計画の説明可能性の強化、(3)フェデレーテッドラーニング(連合学習)、(4)時系列機能の4つ。

 データのプライバシー管理は、アプリケーションやAIモデルにおいて、企業が持つデータが組織全体でどのように使用されているかを総合的にほぼリアルタイムに監視する機能。個人情報の扱いも自動で報告し、精度の向上と監査時間の短縮を図る。GRC(ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス)の統合基盤「IBM OpenPages with Watson」に追加する。

 予測計画の説明可能性は、予測を生成した方法について、より透明性が高く、分かりやすい事実を提供する機能。計画や予算編成、予測を自動化する「IBM Planning Analytics with Watson」に追加し、米国では2021年第2四半期に一般公開する予定だ。

 フェデレーテッドラーニング(連合学習)は、データを各組織に置いたまま機械学習を実行するための仕組み。データのプライバシーや守秘義務、法規制順守、あるいは扱うデータ量の問題などから、データを移動できない状況での機械学習を可能にする。サイロ化しているデータソースの使用にも対応する。AIモデルを構築・実行・管理する「IBM Watson Studio」に追加する。

 時系列機能は、過去のデータまたは特徴に基づいて時系列の将来の値を予測するモデルの開発を支援するもの。洞察精度を高めるために種々の単変量データセットに対し精度を高められるとする。対象データとしては、電話の通話ログや気象データ、輸送時間、小売りの売り上げ、生産量などを挙げる。「IBM Watson Studio」に追加する。