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ネット環境が未整備な工場の半数が毎週の計画外停止を経験、米Forresterの調査

DIGITAL X 編集部
2021年6月9日

工場全体でのネット環境への接続環境が整備されていない企業の半数が、産業用機器の計画外停止に毎週遭遇している--。こんな調査を米Forrester Consultingが実施した。ネット環境が整備されている企業は、2割未満だった。調査を依頼したアナログ・デバイセズが2021年5月26日に発表した。

 米Forrester Consultingが実施したのは、産業用コネクティビティ(ネット接続性)に関する調査。世界の製造や運用、コネクティビティに関わるエグゼクティブを対象にオンライン形式で実施し、300人超の回答を得た。

 同調査では、工場におけるコネクティビティについて、関連技術への投資と実装度合いを「成熟度」として、高・中・低の3つのレベルに分けている。

 例えば、インダストリアルIoT(IIoT:Industrial Internet of Things:産業用モノのインターネット)技術について、成熟度が高い企業の85%が既に導入済みなのに対し、成熟度が低い企業は17%にとどまった。成熟度が低い企業の53%が、他のアセットと通信できない旧式の機器を使用しているとした。

 そのためか、「産業用技術/機器の計画外停止が毎週発生する」とする割合は、成熟度が低い企業は53%と半数を超えた。成熟度が高い企業は5%、中程度の企業は17%と、いずれも2割未満である。計画外停止は、在庫コストや単位当たりの労働コストを押し上げ、生産ロスや顧客からの信頼低下につながっていく。

 サイバーセキュリティへのリスクも、成熟度の低い企業の54%が、高度なサイバーセキュリティ戦略が欠如しており、企業や顧客、従業員の安全性が危険に晒されているとする。

 一方、成熟度の高い企業は、5G通信の導入を含め、ネットワークの信頼性向上が重要な機会を創出すると考えている。「既存のクラウドインフラの有効活用が可能になる」(68%)、「産業用データとIPのセキュリティ強化につながる」(66%)ことを期待する。これに対し成熟度が低い企業では「ネットワークの信頼性向上によりセキュリティを改善できる」と考える割合が21%にとどまる。

 成熟度が低い企業の取り組みが遅れている背景には、「どのコネクティビティ・テクノロジーに投資すべきか判断できる専門知識を持った人材が不足している」という“人材不足”がある。半数近い47%が、そう回答した。ただ成熟度が高い企業でも「労働力計画の策定と安全性に関する意思決定に必要な知見を得ることは簡単ではない」とする声が強い。

 多くの企業がIIoTなどの利用に動いているなかで、旧式の機器に起因するシステムやデータの相互運用性が不十分なことや、社内に専門知識を持つ人材が不足していることが、製造現場のデジタル化の障害物になっているようだ。