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デジタルバンクの顧客増背景に金融機関のFintechとのAPI連携が加速、APAC地域を対象に米IDCが調査

DIGITAL X 編集部
2021年6月14日

コロナ禍で生活様式が変化するなか、デジタルバンクが顧客数を伸ばしており、アジア太平洋(APAC)地域の既存銀行がFintech企業との連携を加速させる--。米IDCによる、こんな調査結果をデジタルバンキングのための基盤サービスを提供するオランダのBackbaseが2021年5月31日に発表した。

 Backbaseが発表したのは、『アジア太平洋地域におけるフィンテック・デジタルバンキングに関するIDC調査レポート』の第2版。米IDCが2020年第4四半期から2021年第1四半期に、アジア太平洋(APAC)地域のオーストラリア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、インドの銀行やFintech企業を対象に実施した。

 同調査レポートは、従来型の銀行は、融資や預金などの中核サービスを強化しながらも、Fintech企業との連携により新しい技術を取り入れる動きが加速する予測する。特に個人向け銀行業務における融資決定では、2021年の半ばまでに半数がFintech技術を活用した提案に基づくものになるとみる。

 銀行のデジタルチャネルへの投資は、新規顧客の獲得や、ウォレット(電子財布)のシェア拡大、商品拡充などの成果につながっている。APAC地域の上位250行の44%が「プラットフォームを徐々に近代化させ、API(アプリケーションプログラミングインタフェース)連携させる」とする。

 この背景には、新興のデジタルバンクが顧客数を伸ばしていることがある。2020年の顧客数の前年比増加率は、デジタルバンクが従来型の銀行の約3倍に達している。同調査は、2025年までに100のFintech企業が新規参入し、各国の市場でデジタルバンクが少なくとも2行、新設されると予測する。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、新興銀行やFintech企業の何社かは市場から撤退している。だが、2019年までに事業拡大してきたFintech企業の中には、その後も予想以上に市場シェアを獲得し業績好調な企業もある。業績を伸ばしているのは、決済、富裕層向け資産コンサルティングの「ウェルスアドバイザリー」、オルタナティブデータ、融資プラットフォーム、口座開設などを手掛けるFintech企業だ。

 それだけに従来型の銀行は、デジタル化の必要性を十分に認識し、その推進にさらに注力しており、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みは2021年に再加速すると予想する。

 各国の大手銀行の50%がすでに、顧客ニーズに迅速に対応するための新たな枠組みを取り入れている。特にアジャイルチームやDevOps(開発と運用の統合)チームを再編成することが、デジタル化に成功する可能性を高めると考えている。

 DXに向けた戦略的投資では、2020年は、ガバナンス、リスク、コンプライアンスに関するテクノロジーへの支出が前年比で2桁成長を遂げた。今後は、APAC地域の銀行の60%が「データに基づいた意思決定のためのAI(人工知能)または機械学習の技術を活用する」とする。前年は48%だった。