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金融取引などでの不正予防に対応できるAIプロセサ、米IBMが開発

DIGITAL X 編集部
2021年9月6日

金融や商取引、保険などにおける不正の予防に対応できるプロセサを米IBMが開発した。AI(人工知能)関連の処理速度を高める機能を持ち、不正行為にリアルタイムで対応できるようになるとする。2021年8月23日(米国時間)に発表した。

 米IBMが開発した「Telum」は、AI(人工知能)ソフトウェアを高速で処理する機能を搭載したプロセサ(写真1)。銀行や金融、商取引、保険におけるトランザクション処理の実行中にAIまたは深層学習(ディープラーニング)技術による推論を可能にし、不正行為にリアルタイムで対応する。

写真1:AI(人工知能)処理の高速化機能を搭載したIBMのプロセッサ「Telum」

 Telumを使うことで、サービスレベル契約(SLA:Service Level Agreement)を変えることなく、取引完了前に不正行為を予防できるようになる。これまでの不正検出を、不正予防へと変革できるとしている。

 具体的には、既存ルールを基準とした不正検出の強化や、マネーロンダリングの防止、クレジットの承認プロセスの迅速化、顧客サービスや収益性の向上、不成立の可能性がある取引やトランザクションの特定、決済をより効率化するためのソリューション提案などである。

 TelumはIBM Research AIハードウェアセンターが開発した技術を初めて採用したチップ。韓国Samsungを技術開発パートナーに、7nm(ナノメートル)プロセスのEUV(極端紫外線)露光によるテクノロジーノードで開発した。IBMシステムへの採用は2022年前半を計画している。

 IBMによれば、企業は通常、不正が分かった後に検出技術を適用しており、特に基幹業務に関わるトランザクションやデータから遠く離れた場所での不正の分析・検出では時間や計算能力を大量消費する可能性があった。

 情報伝達のレイテンシ(遅延)要件によっては、リアルタイムで複雑な不正検出を完了できないことも多い。結果、悪意をもってクレジットカードを盗んだ人物が商品を購入した後で小売業者が不正行為に気付くといったことが起こっている。

 米国の連邦取引委員会(FTC)がまとめた2020年度版『Consumer Sentinel Network Databook』によると、2020年の不正行為による消費者の被害額は33億ドル以上にのぼり、2019年の18億ドルより増えている。