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サプライチェーンの調整業務を先進技術で“劇的に”効率化を図る「自律調整SCMコンソーシアム」が始動

DIGITAL X 編集部
2021年9月29日

サプライチェーンにおいて日々発生している様々な調整業務の効率を先進技術を使って“劇的に”高めることを目指す「自律調整SCMコンソーシアム」が始動した。実用的な調整業務フローを整理・検証し、その発展と普及を図る。まずはNEC、OKI、豊田通商、BIRD INITIATIV、東京農工大学、中央大学、名古屋工業大学、東京大学など計33会員が参加する。2021年9月17日に発表した。

 「自律調整SCMコンソーシアム」は、サプライチェーンの最適化において発生する「企業・組織・個人間での利害や挙動の調整業務」を先進技術を使って効率を高めることを目指すコンソーシアム。先進技術を使ったソリューションの提供者と、そのユーザー、学術専門家など様々な立場のメンバーによる協働によって活動を進めていくという。

 具体的には、代表的なユースケース群に関して、先進技術を活用することで、「より劇的な効率化を実現する」(同コンソーシアム)という調整業務フローを整理・検証し、その発展と普及を図る(図1)。

図1:「自律調整SCMコンソーシアム」が取り組むサプライチェーンにおける調整業務のユースケースの例

 製造業のユースケースとしては、予想を超えた製品需要の高まりや必要部材の納入遅れに対応するための、取引先との納期や数量の調整などがある。物流業であれば、突発的な荷送依頼やトラックの到着遅れに対応するための納期や価格等の調整や、関係者との受入条件の調整などが挙げられる。

 これらのユースケース群に対して、自動交渉AI(人工知能)技術などを使って効率化を高めるソリューションアーキテクチャーを開発・整理し、実証実験によって検証する。そこでは実用上の要件として、業界の商習慣や周辺業務との整合性、不本意な調整への合意が強制されないこと(自己決定権の確保)や、対外秘情報の提供が不要であることとなどを満たすことを想定する。

 検証した調整業務フローを普及させるための活動を積極的に推進する。他者が効率化を実現すれば自身の効率性も高まるというサプライチェーンの性質から、効率的な調整業務フローの利用者が増えれば増えるほど、利用者それぞれが得られる価値も相乗的に高まることが期待できるからだ。

 普及・促進活動としては、単なる報告書の発表や講演・展示のほか、調整メッセージの標準仕様の策定と参照実証の開発、国際的な標準化団体や業界団体への提言、学術界でのコミュニティ形成などにも取り組むとしている。

 2021年9月17日時点の同コンソーシアムに参加するのは、表1にある33会員。ユーザー会員のTMIPは大丸有環境共生型まちづくり推進協会が運営するオープンイノベーションのプラットフォームで、60社超のTMIP会員のうち希望される企業に対し、同コンソーシアムへの参画・連携機会を提供するとしており、会員は随時募集する。

表1:「自律調整SCMコンソーシアム」の参加会員(2021年9月17日時点)
会員属性会員名
一般会員NEC、OKI、BIRD INITIATIVE、サプライチェーン情報基盤研究会、日本総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、NECソリューションイノベータ、 アビームコンサルティング
ユーザー会員豊田通商、郵船ロジスティクス、VAIO、日本立地センター、菊池製作所、三菱重工業、NECプラットフォームズ、日新、ネクスティエレクトロニクス、豊通物流、伊藤忠インタラクティブ、TMIP(Tokyo Marunouchi Innovation Platform)、駿河精機、ANA Cargo、平河ヒューテック
学術専門家委員渥美坂井法律事務所・外国法共同事業、藤田桂英 東京農工大学 准教授、西成活裕 東京大学 教授、和泉潔 東京大学 教授、津村幸治 東京大学 准教授、大塚孝信 名古屋工業大学 准教授、工藤裕子 中央大学 教授、ジャパンイノベーションパーク、産業技術総合研究所、伊藤孝行 京都大学 教授

 自律調整SCMコンソーシアムによれば、製造業における製品の納期・数量や価格の調整、物流業における配送条件や価格の調整など、あらゆる産業のサプライチェーンでは、取引相手との様々な調整業務が企業・組織・個人などの間で日々大量に発生している。

 これらの調整業務は人手で実施されるのが主流だが、取引の小ロット化、製品の複雑化・多様化、きめ細かなニーズへの対応要求、競争環境の激化などにより、より複雑な調整業務を、より短時間で、より大量に、かつ正確に実施する必要性が高まってきた。

 昨今の災害や疫病などによる主要部材のひっ迫、少子化によるサービスの担い手の減少といった状況下においては、サプライチェーンでの調整の成否が、各社の存続あるいは社会機能の維持をも左右するまでになってきている。