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船舶の衝突リスクを予測するためのAI技術、富士通が開発

DIGITAL X 編集部
2021年10月5日

湾内など航路が複雑なエリアでの船舶衝突リスクを予測するためのAI(人工知能)技術を富士通が開発した。実証実験では衝突への過剰な警告を約90%抑制できたとし、海上交通管制における業務負荷を軽減できるという。2021年9月28日に発表した。

 富士通が開発したのは、湾内など航路が複雑に存在する海域での船舶同士の衝突危険度を判定するためのAI(人工知能)技術。航路においてカーブしている部分を含めて船舶が航路に沿っている度合いを算出する(図1)。こうした技術は、これが国内では初めてという。

図1:新技術では航路のカーブしている部分を含めて船舶の針路を判定する

 カーブ部分を対象にできたことで、航路に沿った進路変更などは「危険な操舵」とは検知しなくなる。海上交通の管制業務では、危険な航行をしている対象船舶の早期認知や衝突回避に向けた初動対応が重要だが、新技術は、危険を知らせる過剰なアラートを抑制でき、結果として業務負荷の軽減や海上交通の安全性向上につながるとしている。

 従来の技術では、船舶が直線方向に進むことを前提に、船舶の位置や速度、向きなどのデータを学習したAIシステムで衝突危険度を算出していた。そのため航路の屈曲部で過剰なアラートが多発し、危険回避情報を、どの船舶に、どのタイミングで提供するかの判断は運用管制官の経験や技量に依存する形になっていた。

 新技術については海上保安庁と共同で、東京湾海上交通センター(横浜市中区)において2020年11月17日から2021年9月2日にかけて実証実験を実施した。結果、屈曲部を含む航路全体において、従来技術では検出していたアラートの約90%を抑制できたという(図2)。

図2:東京湾での実証実験では、航路の屈曲部付近での過剰なリスク検知を抑制できた

 一方で、危険度の高い事象に対しては約95%を高リスクがあると判定できた。新技術による判定を運用管制官が船舶に出した警告や勧告と比較した。新技術の判定は運用管制官の判断に近く、業務支援策としての有効性を確認できたとしている。

 実証実験の成果を踏まえ今後は、AI技術を強化し、2022年3月までに安全航行支援サービスとしての提供を目指す。