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データ流通基盤の日欧連携に向けた共同実験、NTT Comなどが開始

DIGITAL X 編集部
2021年10月22日

データ流通基盤を日本と欧州とで連携させるための共同実験をNTTコミュニケーションズ(NTT Com)が開始する。パートナー企業らとともに、欧州のデータ基盤との連携を図るほか、国や企業の違いを吸収できる共通データモデルも開発する。企業間の取引データだけでなく、CO2や廃棄物の排出量データなど持続可能な社会に関連するデータの流通も想定する。2021年10月14日に発表した。

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が開始するのは、各国で構築が進むデータ連携基盤の国際連携のための共同実験。欧州が開発中のデータ流通基盤「GAIA-X」に対応する形で、NTT Comらが相互接続に向けたトライアル環境を構築し、グローバルに利用できるデータ流通基盤の利便性や機能性、実用性を検証する(図1)。

図1:国際データ流通基盤の日欧連携共同実験の概要

 実験は2021年10月から2022年3月までの予定で実施する。国際連携が実現すれば、製造業者などは、工場の機器データや受発注情報をグローバルに交換できるほか、製品のライフサイクルにおけるCO2や廃棄物の排出量データなどの流通が可能になる。NTT Comは実験の成果を基に、国際データ流通基盤の商用サービスを2022年度上期から開始したい考えだ。

 欧州側のデータ流通基盤「GAIA-X」は、欧州が2022年4月にサービス開始を予定するもの。欧州の企業や行政、機関、市民それぞれの権利を守りながらデータの流通を可能にするために、データ保護や透明性、信頼性の担保、相互運用性を確保したデータ流通基盤としての社会実装を目指している。欧州以外からの参加も呼びかけている。

 実験では、GAIA-Xに準拠するオランダの「Smart Connected Supplier Network」やドイツの「Catena-X」など、欧州産業界が構築中の複数のデータ流通環境との相互接続を実験する。

Industrie 4.0標準の通信プロトコルで連携を可能に

 実験に向けNTT Comは、GAIA-Xの技術標準「IDS(International Data Spaces)」が示す接続方法「IDSコネクター」に沿って、同社のデータ基盤「withTrust」を連携させるためのトライアル環境を開発した。IDSコネクターによる相互接続については2021年4月、スイスと日本/ドイツの間でデータ連携ができることを確認済みである。

 トライアル環境の開発では、脱炭素や資源循環に向けた製造データの国際流通に必要な要件を、ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)のグローバルデータ流通管理基盤検討サブワーキンググループ(主査はNTT Com)で定義した。

 併せて、産業オートメーション用の通信規格「OPC(OLE for Process Control)」を使ったデータ交換規格「OPC UA」に沿ったデータ連携・交換機能もトライアル環境には用意した。OPCはドイツの産官学プロジェクト「Industrie 4.0」が採用するプロトコルだ。

 実験では、製造時のCO2排出量などを国や業界による商習慣や法律の違いを越えて伝達するための、共通データモデルの開発にも取り組む。今回の日欧での共同実験で実用性を検証し、OPC UAを定めるOPC FoundationにOPC UAのコンパニオン情報モデルとして提案したい考えだ。

 またデータ社会推進協議会(DSA)が開発しているデータ流通基盤「DATA-EX」に対しても、NTTグループ各社やRRIなどと協力しながら、実験の成果を反映させる。

 欧州との共同実験には、パートナー企業・団体とともに望む(図2)。GAIA-X準拠のデータ連携基盤を日本企業が利用するための課題を抽出し機能要件を具体化するとともに、GAIA-Xへ対応するためのシステム改修などの負担の軽減を図る。今後も、実験参加を希望するパートナー企業・団体を募集する。

図2:欧州との共同実験に参加するパートナー企業・団体

 NTT Comによれば、企業や国家の機密の流出防止やデータ主権の保護に向け、データの越境流通や利活用を管理・規制する法制度や技術整備が世界各国・地域で進んでいる。