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トラックの共同輸送に向けた荷主のマッチングサービス、JPRが開始

DIGITAL X 編集部
2021年10月29日

トラックでの共同輸送に向けた荷主のマッチングサービスを、日本パレットレンタル(JPR)が2021年10月21日に開始した。業界をまたいだ共同配送の機会を創出することで、空荷での走行を減らしたり積載率を高めたりを可能にする。マッチングのための中核技術は群馬大学と共同で開発した。同日に発表した。

 日本パレットレンタル(JPR)が開始した「TranOpt」は、トラック輸送における共同輸送のためのマッチングサービス(図1)。参加各社の輸送経路などをデータベース化し、共同配送が可能な荷主企業の組み合わせ候補を提示する。総走行距離のうち荷物を積んでいる距離の割合を示す実車率や積載率の向上、およびCO2排出量の削減につなげる。

図1:共同輸送マッチングサービス「TranOpt」の概要

 TranOptを利用する荷主企業は、自社のルート情報や積荷、輸送上の詳細条件を登録する。希望条件に応じ、TranOptは複数の共同配送候補を提示する。共同輸送時の運賃の予測値と、協力企業間で費用を公平に負担するための計算もできる。これらを見ながら共同輸送をしたい相手を選び、実行に向けた調整をTranOpt上で相互に図っていく。

 正式なサービスを前に、2021年8月末まで無償でのモニター期間を設けた。モニターには100社が参加し、そこでのマッチングできた輸送経路の平均実車率は93%に達したという。

 マッチングのための中核技術は群馬大学と共同で開発した。対応する共同配送は、(1)三角輸送と(2)混載輸送である。三角輸送は1台のトラックが複数の輸送を逐次対応するもので実車率が大きいほど効率が高い(図2の左)。一方の混載輸送は、複数社の荷物を同時に運ぶもので、短縮率が小さいほど効率は高くなる(図2の右)。

図2:共同配送における三角輸送の例(左)と混載輸送の例(右)

 最適解の算出には、「距離の公理」など数学理論を活用している。距離の公理とは、「別の地点を経由して目的地に向かう距離は、目的地に直接向かう距離以上になる」といったものだ。

 理論の活用により、ある実車率の達成に必要な条件を「第一の輸送と第二の輸送の間の空車距離は、これ以下でなければならない」「第二の輸送の輸送距離は、これ以上でなければならない」といった形で逆算できる。データ構造や探索の走査順序を工夫することで候補を高速に列挙できるとしている。

 この仕組みでは、算出結果に対する説明可能性も担保できるという。具体的には「実車率が95%以上の三角輸送をすべて列挙している」「短縮率が40%未満の混載輸送をすべて列挙している」という形になる。

 ほかにも共同輸送の実現確率を高めるために、(1)輸送経路や距離だけでなく、積荷の種類や季節波動などの諸条件を考慮する、(2)マッチング後の調整作業が面倒に感じられないようそれぞれの希望度合いを含めてマッチングを図るといった工夫もしている。

 JPRによれば、日本のトラックの積載効率は40%未満である(『総合物流施策大綱』2021年度~2025年度)。長距離輸送における復路の空車が要因の1つだ。共同輸送は改善策の1つではあるが、同一業界では物流形態や季節波動が似ており、互いに利点のある経路を見いだし難い。一方で異業種間では日常的な交流が少なく共同輸送の相手を見つけること自体が実務的に難しい。

 TranOptの利用料金は、成約時に手数料を得る成功報酬型を基本とし、希望に応じて定額利用型でも提供する。会員登録やマッチング相手を探すこと自体は無料だ。