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仕事での孤立は組織への愛着心や幸福感、帰属意識を下げる、クアルトリクスの調査

ANDG CO., LTD.
2022年4月14日

「仕事で他者とのつながりが弱いと、エンゲージメント(愛着心)やウェルビーイング(幸福感)、帰属意識が低下する−−。こんな調査結果を、CX(Customer Experience:顧客体験)やEX(Employee Experience:従業員体験)のための基盤を提供するクアルトリクスが2021年12月22日に発表した。

 クアルトリクスが実施した『職場における孤立の実態調査』は、孤立が業務に与える影響を調査したもの。2021年10月20日から22日にかけてアンケート調査を実施した。有効回答数は4435人。設問設計には、埼玉大学経済経営系大学院の宇田川 元一 准教授が協力した。

 仕事に関連した人とのつながりについて、「職場に仕事上の相談相手がいる」との回答が56%だった(図1)。ただ、「職場以外にも相談相手がいたり、自分から積極的に他者に働きかける」とした回答は5割に満たなかった。

図1:仕事関連での人とのつながり状況(肯定的=「非常にそう思う」「そう思う」の合計、中立的=「どちらともいえない」、否定的=「そう思わない」「全くそう思わない」の合計。以下同)

 直属上司についても、「彼らからのアドバイスやワークライフバランスへのサポートを肯定的に捉えている」とする回答は全体の4割未満だった。「勤務先が社内の人間関係を強化するような施策や制度を導入している」との回答は2割に留まるなど、全般的に仕事を通した人とのつながりは、どちらかといえば弱いと解釈できるとする。

 この結果から、周囲とのつながりの強弱によって「連携グループ」と「孤立グループ」、および中間に位置する「平均グループ」に分けて、それぞれの属性傾向を分析した。結果、孤立グループは、「男性、40代、一般社員(非管理職)、勤務先の従業員規模が500人未満」という属性を持つ人の割合が、連携グループのそれより高かったという。

 各グループの職場に関する意識・意欲について、エンゲージメント(愛着新)、ウェルビーイング(幸福感)、帰属意識の3点を調査した。例えば帰属意識については、連携グループの72%が肯定的なのに対し、孤立グループは20%にとどまり、逆に49%が否定的とした。愛着心、幸福感についても、連携グループよりも孤立グループの方が否定的な回答が多く、孤立の影響が大きく出ているという(図2)。

図2:エンゲージメント(愛着新)、ウェルビーイング(幸福感)、帰属意識のレベル

 孤立グループにあっては、「業務分担の適切さ」「関係者の議論に基づく意思決定」「職場における学びや成長機会」について肯定的な回答が10%台にとどまっていた(図3)。孤立グループは、「担当する業務量が少ない」「自身の業績は組織の平均以下」とする比率が連携グループより高かった。

図3:日々の業務における体験内容

 この結果をクアルトリクスは、「周囲との連携が弱い分、十分な仕事が回ってこなかったり、あるいは一人で仕事を抱え込み、もがきながら業務を遂行しているような状態が発生しやすいととらえられる」としている。

 こうした従業員の孤立に対し、リモートワークが引き金になり悪化した面があると推察できるともいう。ただ実際には、孤立グループのほうが出社比率は高かった。「出社して単に空間と時間を共有するだけでは、職場における孤立は解消されない可能性が高い」とみる。

 今回の結果について埼玉大の宇田川准教授は、「成熟した組織は、効率化を求めて機能分化すると言われてきたが、近年は環境変化に対応するために多様な職能が求められるようになったため、職場で孤立が進むことは、ある意味、必然かもしれない。しかし、孤立問題へどう対処するかは、企業変革やイノベーション育成に関する重要な論点になり得る」と話す。