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DXの推進や人材確保には人事制度改革や経営トップの役割が重要、日本生産性本部が示唆

DIGITAL X 編集部
2022年5月17日

「企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進やDX人材の確保のためには組織改革や人事制度改革が重要」--。日本生産性本部のイノベーション会議が独自調査から、こんな示唆を導き出した。DXに全社を挙げて取り組んでいる企業では、経営トップ自らがDXを推進し、新規事業の創出やビジネスモデルの変革などに成果を上げている傾向があった。2022年2月16日に公表した。

 日本生産性本部イノベーション会議が公表した『企業のDXを進めるための人材戦略~DXと人材戦略に関するアンケート調査からの知見』は、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みやDXを実現するための人材戦略などに関するアンケート調査の結果と、そこから得られた示唆などをまとめたもの。

 アンケートは、上場企業の経営者(社長、会長)やデジタル戦略専門役員、人事戦略専門役員を対象に、2021年10月18日から同11月8日にかけて郵送とインターネットで実施した。143社から有効回答を得た。

 調査結果から得られた示唆は大きく3つあったとする。(1)DXでの事業革新に成果を上げている日本企業は3割前後、(2)DXのための組織改革や人事制度改革には踏み込んでいない企業が多い、(3)足りないとするDX人材育成においても社員研修を実施していない企業が4割である。

 DXに「全社を挙げて取り組んでいる」と回答した企業は全体の63.6%(以下「DX推進企業」)あった。だが、その成果について「新規事業の創出」は30.8%、「ビジネスモデルの変革」は27.1%に留まった(図1)。DX推進企業に限っても「新規事業の創出」は35.7%、「ビジネスモデルの変革」は31.7%と達成度は高くない。

図1:「DXの目的のうち、成果が出ているもの」への回答(複数回答可、調査対象の全体)

 DXを進めるための課題については、「DX人材の不足」が「量的に」「質的に」のいずれもが84.9%と多い。DX人材に絞った課題でも、「DX人材の量的不足」が91.4%と圧倒的に多い。次いで「DX人材の適切な育成方法が分からない」が42.4%あり、採用や育成の両面に課題を抱えている。

 しかし、DX推進のための組織改革には「特に取り組んでいない」とする回答が40.6%と最多である(図2)。「出島などイノベーションのための組織の創設」や「企業理念や存在意義(パーパスなど)の明確化」を実施した企業はいずれも25.2%に留まる。DX推進企業においても、そのための組織変更までには進んでいない傾向がある。

図2:「DX実現のために組織改革を行ったか(あるいは取り組んでいるか)」への回答(複数回答可、調査対象の全体)

 人事制度の見直しでは、「教育・研修制度の強化」には37.1%が取り組んでいる(図3)。しかし「デジタル人材向けの特別な処遇制度や評価制度の導入」が9.8%、「年功的賃金の廃止・大幅縮小」が7.7%など、人事制度の本格的な見直しに取り組んでいる企業は1割前後になる。「特に見直していない」企業も23.8%存在する。これらの傾向はDX推進企業でも大きな違いはなかった。

図3:「デジタル化時代に対応するために人事制度を見直したか」への回答(複数回答可、調査対象の全体)

 社員研修においても、「DX人材育成のための研修は実施していない」企業が39.2%に上る。従業員1000人未満の中堅企業では66.7%の企業が研修をしていない。DX推進企業では、社内外の研修をおよそ半分が実施している一方で、研修をしていない企業も24.2%ある。

 これらの結果からインベーション会議は、DXへ取り組む企業は多いものの事業革新で成果を上げている日本企業は3割前後と途上であり、DX推進企業であっても組織改革や人事制度改革には取り組んでいない企業が多い。組織の創設や企業理念の発信など、経営トップの事業構想と設計が求められており、人材の採用とともに育成が必要だとしている。