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認知症などの予防に向けた脳健康測定プログラム、医療画像診断のエムが開発

DIGITAL X 編集部
2022年5月20日

認知症など脳疾患の予防を目的に、発症リスクを未病の段階で評価するための脳健康測定プログラムを、医療画像診断などを手掛けるエムが開発した。MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)の3万例を超えるビッグデータをAI(人工知能)で分析することで、脳の萎縮や脳血管の劣化を検出し、生活習慣改善による予防を支援する。2022年2月18日に発表した。

 医療画像のAI(人工知能)技術を使った分析などを手掛けるエムの「MVision brain(エムビジョンブレイン)」は、脳の健康測定プログラム。脳ドックなどMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)を用いた頭部検診に追加し、認知症や脳梗塞患者に広く認められる特徴である脳の萎縮と血管性変化を総合的に評価し、脳の健康状態を数値化する(図1)。

図1:脳の包括的萎縮評価における正常例(左)と血管性病変の例(右)

 この評価に、脳の健康状態に影響を及ぼす血糖・血圧・内臓脂肪・飲酒に関するデータを加えて診断レポートを作成する(図2)。過去に頭部MRIを撮影していれば、当時のMRIデータからレポートを作成できるためMRI再検査は不要だとしている。

図2:脳の健康診断レポートのサンプル

 診断レポートでは、受診者が脳の健康維持・改善するために取るべき方法を示し、生活習慣改善による認知症予防を支援する。レポートをきっかけに専門クリニックの受診を促すプログラムも用意する(図3)。認知症のエキスパートがフォローアップしたり確定診断を下したりする。

図3:MVision brain/脳ドック/専門クリニックの三者が連携する脳健康支援プログラムの流れ

 MVision brainは、米ジョンズホプキンス大学の画像解析技術を用いて、東京ミッドタウンクリニックと共同で研究・開発した。3万例を超えるMRIの脳画像をビッグデータとして3年をかけてAI技術で分析することで、各年齢における日本人の正常値や異常値を検出し、加齢によって高まる個人の認知症リスクを未病の段階で統計的に割り出せるようにした。

 MRI撮影装置の機種や撮影条件などの違いによる施設間の誤差を補正するキャリブレーション技術も確立した。現在、脳ドックで用いられている3~7.2ミリの低解像度データでも分析できるという。

 エムによれば、認知症をはじめとする脳疾患の多くは、発症の10年以上も前から徐々に進行する生活習慣病とされる。早期に予兆を検出できれば、生活習慣を改善でき、発症を予防できる。