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持続可能な環境再生型農業のためのデジタルツイン、NTT西日本などが共同で研究・構築

DIGITAL X 編集部
2022年5月20日

自然環境に配慮した持続可能な環境再生型農業の普及・拡大を目的とした共同研究にNTT西日本など8組織が取り組んでいる。熟練農家の“匠の技”を可視化するために、農場から土壌や微生物、作物に関するデータを収集・解析し、AI(人工知能)技術で分析するためのデジタルツインを構築する。2022年2月21日に発表した。

 NTT西日本など8組織が取り組むのは、自然環境に配慮した持続可能な環境再生型農業の普及・拡大するための仕組み作り。土壌と、特定の環境における微生物の集合である微生物叢および作物のそれぞれを示すデータを収集し、科学的/統合的に解析することで相互作用を解明し、熟練農家の“匠の技”を可視化して農業の再現性を高めるのが目的だ。

 研究対象は温州ミカンを選んだ。日本全国の有機栽培、特別栽培、慣行栽培(化学農薬や化学肥料を使用する従来型の栽培)の農場から、それぞれの土壌と果実の両方を収集し、農業のためのデジタルツインを構築する(図1)。

図1:温州ミカンの農場から土壌と果実を収集し、AI技術で分析するためのデジタルツインを構築する

 土壌と微生物叢に対しては、含まれる化学性、水はけ・風通し・保水の良さに加え、土壌微生物のプロファイルと多様度を示す土壌マイクロバイオームを評価する。

 作物に対しては、収量や糖度、酸度、香り成分などの品質を多角的に評価し、高品質な作物が栽培できる土壌条件を明らかにする。栽培過程で発生する温室効果ガスなど環境負荷の定量化も試みる。

 これらのデータから、土壌と微生物叢が、果樹の収量や品質に影響を及ぼす主要因子を明らかにする。そのうえで、多様な栽培方法の農場から得たデータを格納する土壌データベースと土壌AIエンジンによる精密診断の手法を開発する。

 共同研究に参画するのは、NTT西日本に、理化学研究所、福島大学、北海道大学、東京大学(大学院 農学生命科学研究科、農学部)、前川総合研究所、大阪府立 環境農林水産総合研究所、筑波大学を加えた8組織である(表1)。

表1:共同研究に参画する8組織と、それぞれの役割
組織役割分担
NTT西日本土壌のデータベースの作成、AIの検討
理化学研究所土壌のマイクロバイオームの解析、データの統合解析
福島大学果実と果汁の分析
北海道大学土壌の1次処理、温暖化ガスの測定方法の検討
東京大学(大学院 農学生命科学研究科、農学部)土壌の物理性の分析、果汁の分析
前川総合研究所土壌と果樹の収集
大阪府立 環境農林水産総合研究所土壌の化学性の分析
筑波大学果汁の評価方法の検討

 環境再生型農業は、環境汚染を招く化学肥料や化学農薬の利用を控え、土壌を修復/・改善しながら自然環境を回復させる手法。農業の自然循環機能の増進と、環境負荷の低減、生物多様性の保全に配慮し、自然を優先して良い影響をもたらす“ネイチャーポジティブ”な農業だという。

 ただ環境再生型農業は、除草を含む労力がかかることや、栽培技術が未確立で再現性が低く収量や品質が不安定などの問題がある。結果、従来型農業からの切り替えが進んでいないのが実状だという。