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CIOは信頼関係構築に注力を、ガートナージャパンが提言

DIGITAL X 編集部
2022年7月14日

「日本企業のCIO(最高情報責任者)とIT部門は、社内外での信頼関係構築に注力を」--。ガートナージャパンが、こんな提言をしている。社内人材の育成や組織の活性化、実験コストの管理方法の改革などを求める。2022年4月14日に発表した。

 ガートナージャパンが提言するのは、デジタルビジネスの推進に向けて日本企業のCIO(最高情報責任者)が2022年に注力すべき施策。(1)CIOとIT部門の役割、(2)人材と組織、(3)ITコスト管理の3つの観点から提言する。

 (1)CIOとIT部門の役割について同社 バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの藤原 恒夫 氏は、「社内外での信頼関係の構築、組織文化とスキルの構築、グループ企業全体でのIT組織の役割を再定義することが重要だ」とする。

 社内での信頼関係の構築では、CIOとIT部門はシステムに専念する立場から事業部のパートナー的な立場へと役割が変革していくとする。具体的には「IT部門以外の事業部内で、社内外に向けたシステムの構築や情報分析など従来のIT業務をこなす社員と協働/共存していく必要がある」(藤原氏)。ガートナーは、事業部内でIT業務をこなす社員を「ビジネステクノロジスト」と呼ぶ。

 社外との信頼関係としては、パートナーやスタートアップ企業、場合によっては顧客や競合他社も含むエコシステムの中で多分野混成チームを形成する必要があるとする。「エコシステムの中で、CIOとIT部門は横断的なガバナンスや企画、設計、構築、運用に貢献するとともに、提案と交渉を積み上げて信頼関係を構築することが求められる」(藤原氏)という。

 組織文化とスキルの構築では、イノベーションの推進に向けて、現場でリスクを取って創造や探求ができる文化やスキルの構築、データの活用と分析の能力を構築し、データに基づくコミュニケーションや意思決定を促すことが重要だとする。

 グループ企業でのIT組織の役割について藤原氏は、「内製化とアウトソース、そしてIT子会社を含めたグループ企業全体での、IT組織の役割の整理と再定義が重要だ」とする。「ベンダーやパートナーを含めたIT関連全体の役割と、それぞれの役割分担を見定め、エコシステム全体で戦略を確立すべきだ」(同)ともいう。

 (2)人材と組織については、「外部からの人材獲得は競争が激化しているため、社内に存在する潜在性の高い人材を成長・活躍・定着させていく」ことをCIOに促す。

 特に「全社的なスキルの保有と分散の方法、パンデミック以降のIT組織の健康状態、従業員価値提案(EVP)に関する取り組みに注力するべきだ」と、同社ディスティングイッシュト バイス プレジデント 兼 ガートナー フェローの足立 祐子 氏は強調する。

 具体的には、自社にとってのEVPの要素を特定し、データを基に満足度を高めることが、従業員の定着率の改善や外部の優秀なIT人材の獲得につながるとする。足立氏は、「CIOがIT人材の役割と責任を見直し、魅力的かつ現実的なEVPの要素を設定し、IT部門のチームの再構築に取り組むべきだ」という。

 (3)ITコスト管理については、「経営者はITコストを変革(Transform)・成長(Grow)・運営(Run)といったビジネスの目的ごとに分類し、増やすべきコストと減らすべきコストを明確に提示すれば、より効果的だ」と同社 シニア ディレクターの片山 博之 氏は指摘する。

 ITコスト管理の手法に対しても、デジタル変革のためのコストは事前に要件定義を確定できないため、従来の予実管理手法は使えないとする。「実験段階のコストは、進めながら成果を予測し予算規模を決めていくなど、柔軟に対応できる新しいコスト管理手法を推奨する。CEO(最高経営責任者)の権限の下、予算ではなく資金(ファンド)を拠出するという方法も検討できる」(同)としている。