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独居の高齢者をロボットを介して人が見守るサービス、セコムとDeNAが開始

愛甲 峻(インプレス総合研究所)
2023年3月28日

一人暮らしの高齢者を主な対象に、ロボットが24時間見守り対話するサービスを、セコムとDeNAが共同で開発した。利用者の発話内容に応じた返答をオペレーターが作成しロボットが発声することで、孤独の解消や生活リスクの軽減を図る。2023年4月3日から提供を開始する。2023年3月23日に発表した。

 セコムとディー・エヌ・エー(DeNA)が共同で開発した「あのね」は、一人暮らしの高齢者を主な対象にロボットが声をかけたり、利用者がロボットに話しかけた内容に応じて実際のオペレーターが作成した返信内容をロボットが発声したりするサービス(図1)。孤独の解消やリスクの軽減など高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上を目指す。2023年4月3日から提供を開始する。

図1:セコムとDeNAが共同で提供する「あのね」で使用するコミュニケーションロボット

 あのねの特徴は、ロボットの裏側で実際のオペレーターが24時間365日対応し、利用者が話した内容に応じて返信内容を作成すること。DeNA ソリューション事業本部 エンタープライズ事業部 事業部長の吉田 航太朗 氏は、「将来的にはAI(人工知能)技術を使った対応も選択肢にあるが、あくまで人間らしさを大事にした人と人とのコミュニケーションをサービスの価値に位置付けている」と話す。

 セコム SMARTプロジェクト サブリーダーの辻村 康弘 氏は、「時間を問わず誰かと話せることが高齢者の安心感につながる」とする。高齢化に伴い独居高齢者が増えるなか、その約半数が2、3日に1回以下しか会話していない(内閣府調べ)。孤立な状況が続けば認知機能や身体機能の低下などのリスクにつながる恐れがあるだけに、対策が求められている。

 あのねのロボットは通常、利用者の生活時間に合ったタイミングで定期的にメッセージを発する。朝・昼・夜の挨拶や服薬の呼びかけなどにより、利用者の生活リズムを整える。利用者がロボットに話しかけた際は、発話内容をクラウド側でテキスト変換し、その内容に応じてオペレーターが返信内容をテキストで作成。そのテキストをロボットが読み上げる(図2)。一度の応答にかかる時間は数十秒から数分という。

図2:「あのね」におけるロボットを介した利用者とオペレーターの会話の流れ

 あのねを企画した背景には、セコムが運営する「セコム暮らしのパートナー久我山」における高齢者の生活支援活動がある。電話や訪問で高齢者に日常的に声をかけたところから好評だったという。セコムの辻村氏は、「何気ない声かけが非常に喜ばれたため、コミュニケーション自体をサービスとして提供できるのではないかと考えた」と話す。

 2018年からは約400人を対象に実証実験も実施し、ニーズの調査やデバイスの選定、サービスのあり方を検討した。参加者からは「有料でも使い続けたい」という声が多数あったことから「サービスとしての有用性を確認した」(辻村氏)という。

 利用者の発話内容やロボットからの応答内容は、専用のスマートフォン用アプリケーションから確認できる。離れて暮らす家族などが見守りのために利用したり、アプリを使ってメッセージを配信したりもできる。

 実際のサービス提供では、セコムは主に販売や問い合わせ・サポート対応を担当。DeNAがメッセージ配信や応答などのオペレーションとシステムの開発・運用を担当する(図3)。

図3:「あのね」におけるセコムとDeNAの役割分担

 ロボットは、ユカイ工学が開発・販売するコミュニケーションロボット「BOCCO emo」をベースに、高齢者が使いやすいように一部機能の無効化などカスタマイズした。ロボットはSIMカードを内蔵し、インターネット経由でクラウドサーバーに接続し、音声認識API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使って利用者の発話内容をテキストデータに変換する。

 当面はコミュニケーションを楽しむためのサービスとして展開し、その後に機能拡充を検討する。例えば、セコムが展開するセキュリティや見守りなどのサービスとの融合や、DeNAグループの日本テクトシステムズやアルムと連携したメディカル領域の新サービスの開発などである。

 あのねの利用料金は、初期費用が5万2800円(税込み、以下同)、月額利用料は4950円。3年後に2万台の販売を目標にする。