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CXを高めるために顧客対応担当者の体験価値を高める、米Zendeskが生成AIを活用
CX(顧客体験)をいかに高めるかが大きな課題になる一方で、カスタマーサービスに携わるスタッフの離職率や採用難が現実問題になっている。両者の両立に向けて、問い合わせ管理システムなどを開発・販売する米Zendeskは、生成AIを活用する。CEO(最高経営責任者)のトム・エッグマイヤー(Tom Eggemeier)氏らが来日し、2023年10月18日の記者会見で方針を説明した。
「カスタマーサービスに当たる従業員の勤続期間は世界平均で約1年であり、定着率が課題になっている。CX(顧客体験)向上を追求するためには、カスタマーサービスを担う従業員の体験、すなわちEX(Employee Experience)の向上が重要だ。企業の生命線は従業員が握っている」――。米Zendesk CEO(最高経営責任者)のトム・エッグマイヤー(Tom Eggemeier)氏は、こう指摘する。
その対応策として同社は、生成AI(人工知能)技術を使った「Zendesk AI」を開発。顧客からの問い合わせ管理システムなどの製品群「Zendesk Suite」に組み込んで提供する。Zendesk AIは、FAQ(よくある質問と答)や業務に関する知見を元に自社開発したAI技術と、米OpenAIのAIチャットボットサービス「ChatGPT」を連携して実現している。
自社AIの学習には、Zendeskの利用データを匿名化して使っている。同社CTO(最高技術責任者)のエイドリアン・マクダーモット(Adrian McDermott)氏は、「過去の数値やトランザクションなどから問題解決済みの“きれいな”教師データで訓練した」と話す。問い合わせ内容の分析により「管理者に対し、どのような業務知見が不足しているかも提案できる」(同)とする(写真2)。
Zendesk AI自体は2023年5月に発表済み。今回、(1)タスクを自動化するボット機能、(2)生成AIの回答精度を高めるために問い合わせ内容から想定されるユースケースを検出する目的検出機能、(3)オペレーターが顧客の印象を素早くつかむための会話要約や文字起こしといった音声通話向け機能の3つを追加・アップデートした。
いずれの機能も「日本企業に最適化した機能として提供する」(エッグマイヤー氏)としている。例えばボットでは、「回答のトーンを、企業イメージに合わせて『フレンドリー』や『プロフェッショナル』などにカスタマイズしブランディングに活用できる」(同)という。
一方で「GDPR(EU一般データ保護規則)や生成AIに関するプライバシーやセキュリティは懸念事項だ」とマクダーモット氏は話す。その対策として管理者に向けて、コンプライアンス(規制遵守)管理、アクセスログ監査、データの表示・非表示定義などの機能を用意し、「機密性の高い情報を扱う際に解決しなければならいユースケースと自身のプライバシーに集中できるようにする」(同)
オペレーター業務を可視化するために、スケジュール作成や作業時間をAI技術で予測する「Tymeshift(タイムシフト)」機能も提供する。「オペレーターが顧客と親密になるための時間を増やせるようになる」とエッグマイヤー氏は話す。Tymeshift機能は日本では2024年第1四半期からの提供を予定する。
生成AI機能の強化に合わせZendeskは、大阪にデータセンターを新設し、2024年7月までの運用開始を目標にする。日本法人社長の冨永 健 氏は、「データを国外に出したくないという顧客ニーズに応えるためだ」と説明する(写真3)。東京のデータセンターと合わせ「米国以外で2つのデータセンターを持つ国は日本が初めてだ」(同)という。
日本法人の顧客数は、2015年の500社から2023年時点では3000社近くに増えている。エッグマイヤー氏は、「伝統的に日本は、グローバル市場から見てもカスタマーサービスを深く理解していると思われる。日本での学びを世界に広めたい」とした。