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成長か売却か、DX時代を迎え岐路に立つIT子会社の現在位置

ガートナージャパンの国内IT子会社の実状調査が浮き彫りに

田中 克己(ITジャーナリスト)
2023年11月27日

ガートナージャパンが2023年10月に発表した『国内のIT子会社の実情に関する調査結果』によれば、IT子会社を置く目的で最も多いのは「コスト削減」であり、「DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現」や「経営戦略の貢献」などは極めて少ない。しかし新規事業開発や顧客接点強化を狙うDX時代を迎え、コスト削減だけで親会社の期待に応えられるのか。売却・事業譲渡の対象なのか、投資拡大の対象なのか、その岐路にIT子会社はある。

 IT子会社の存在価値はあるのか−−。その問に答えるためガートナージャパンが2023年5月、国内IT子会社の実状を調査した。対象は、従業員数500人以上、売上高1000億円以上の日本企業300社。主にCIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)、CDO(最高デジタル責任者)などのIT担当役員やデジタルビジネス推進担当役員が回答した。

 結果をまとめた『国内のIT子会社の実情に関する調査結果』によれば、300社のうちIT子会社を設立しているのは4割弱の114社。その事業形態は、連結対象が87社、連結対象外が21社、ITベンダーなどとの共同出資が6社である。IT子会社を持たない残りの6割超は、内製化またはITベンダーへの委託によりシステムを開発・運用しており、その割合は、ほぼ半々だった。

IT子会社が親会社を「お客様」と呼ぶことの違和感

 調査にあたった同社リサーチ&アドバイザリ部門データ&アナリティクス担当シニアディレクターの一志 達也 氏は、調査のきっかけについて「IT子会社は親会社のIT部門の“仲間”のはずなのに、彼らを『お客様』と呼んでいることに問題意識を持ったため」と説明する(写真1)。つまり、「IT子会社は富士通やNECといったITベンダーや大手SI企業と何がどう違うのか」「親会社はIT子会社をどうみているのか」などを把握し、「IT子会社の存在意義を提言したい」(同)ということだ。

写真1:ガートナージャパン リサーチ&アドバイザリ部門データ&アナリティクス担当シニアディレクターの一志 達也 氏

 IT子会社の設立目的としては、「人件費の削減」(16.9%)、「システム開発コストの削減」(13.8%)、「システム運用コストの削減」(12.3%)という3つのコスト削減が上位を占める(図1)。親会社にすれば、「IT子会社をグループの一員だが、コスト削減手段として存在し、給与水準も親会社より低くする」ということだろう。

図1:IT子会社を設立している理由の詳細

IT子会社に対する評価は2分

 そんなIT子会社に対する親会社の評価は分かれている(図2)。「期待している以上に貢献している」(7.7%)と「期待通りに貢献している」(同41.5%)を合わせた期待以上が半数を占め、残り半数が「期待を下回る」と評価した。「期待を下回る」とする回答の中では、「貢献が不十分」(12.3%)と「全く貢献していない」(3.1%)などIT子会社に改善を強く求める声も15%強ある。

図2:IT子会社に対する評価

 「期待を下回る」場合に親会社はどう行動するのか。「事業譲渡や売却する」との回答が15.4%、「ITベンダーとの合弁にする」との回答が20%あった。「期待を下回る」とした回答者の半分が譲渡や売却などを考えていることになる。

 保守・運用を担っているIT子会社の場合は、クラウドへの移行などで、その必要が低下すれば、譲渡や売却の対象になるケースがさらに増えるだろう。クラウドベンダーや、そのパートナー企業などに委託すれば済むからだ。今回の調査で「現在、IT子会社を持っていない」とした170社(56.7%)のうち、その約4割に当たる71社が「過去には持っていた」と回答している。売却や譲渡のほか、親会社に吸収した例もあるだろう。

 ただ一志氏は、「人件費の削減だけを考えるのは正しくない」とする。給与水準が低いIT子会社を新卒の学生は就職先に選ばないだろうし、優秀な人材はSI企業やコンサルティン会社などに就職・転職するだろう。実際、あるIT子会社の社長は一志氏に、「大手SI企業の傘下に入ったら人材を採りやすくなった」と話したという。