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AI技術がデータ分析の運用体制の再考を迫る、米ガートナーの調査
「生成AIをはじめとするAI(人工知能)技術により、データ分析の運用モデルの進化や再考を余儀なくされている」−−こんな調査結果を米調査会社のガートナーがまとめた。ガートナージャパンが2024年5月8日に発表した。
米ガートナーが実施したのは、世界各国のCDAO(最高データアナリティクス責任者)やCDO(最高データ責任者)、CAO(最高アナリティクス責任者)479人を対象にした調査。2023年9~11月に実施した。
同調査によれば、78%の回答者が、それぞれが構築・運用するデータ分析体制について「2023年中にイノベーションをよりよくサポートするために進化した」とする一方で、「ChatGPTのようなテクノロジーによる市場の混乱により、2023年および/または2024年に進化または見直しを余儀なくされる」とする回答が61%に上った(図1)/
現在および将来の目的に適するよう、どのような変更を加えるべきかについては、38%が「今後12〜18カ月の間にD&Aアーキテクチャーを抜本的に見直す」とし、29%は「データ資産の管理方法を刷新し、ガバナンスポリシー、プラクティス、標準を採用/適用する」と答えている。
ディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストのアラン・D・ダンカン氏は、「データガバナンスや、D&A(Data & Analytics)倫理、データリテラシー/AIリテラシーなどAI技術の主な実現要因の多くに対し、責任を負う役割はCDAOら以外にない。予算とリソースの制約の問題が深刻になるにつれ、CDAOの役割の責任範囲も拡大していく」と指摘する。
実際、CDAOらが担っている主な責任は、「D&A戦略の管理」(74%)と「D&Aガバナンス」(68%)だった。AI技術に対する説明責任を果たすことも重要な課題になっており、49%が「生成AIは自身の主な責任の範囲に含まれる」と回答する。AI技術全般とすれば、58%が「責任の範囲内」だとし、この割合は2023年の34%から24ポイントも増えている。
データ分析のための資金については、前年比で資金が増加したとするCDAOらのうち46%が「予算の制約が課題であることに変わりはない」と答えている。
資金提供モデルを変更するためには、組織の有用性/実現性/推進力としてのデータ分析の価値が、どう影響するかをCFO(最高財務責任者)に説明する必要がある。だが「ステークホルダーがデータ分析の価値を追跡できるようなビジネス成果主導型の評価指標を確立しているCDAOらは49%で、34%はビジネス成果型の評価指標を確立していない」とダンカン氏はいう。
そのうえでダンカン氏は、「CDAOらは目標達成のために自身の力と影響力を高める必要があり、組織の価値推進要素と問題点を隅々まで把握し取締役会に示さなければならない。組織全体への影響力と測定可能なインパクトを最優先課題としないCDAOらの75%は、2026年までにテクノロジ部門に吸収されることになるだろう」とする。
今回の本調査には日本から76人が回答している。シニア ディレクター アナリストの一志 達也 氏は日本の状況について、次のようにみている。
「日本企業の人材やスキルの枯渇感は海外企業と比較して2倍以上になっている。ITや、セキュリティ、D&A、DX(デジタルトランスフォーメーション)と幅広い役割を単独のリーダーが担う結果、その役割や責任が、曖昧になっている。
D&AやAIのような先進的で専門性の高い取り組みにおけるリーダーは、その役割や責任範囲をできるだけ明瞭にし、経営戦略に直結したビジネス成果を出せるよう、経営層と密接にコミュニケーションできる立ち位置でいなければならない」