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工場の自律化に向けたデジタルツインへのAI適用を進める米ロックウェル、異常検知用AIを追加

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年8月1日

産業向けソフトウェアベンダーの米ロックウェル・オートメーションが、工場の自律化を図るためのデジタルツイン環境の実現に取り組んでいる。顧客ニーズの変化に追随できるよう、生産システムの設計にAI(人工知能)技術を適用し、データに基づいた設計・変更を目指す。その一環としてこのほど、現場の異常を検知するAI製品を投入した。2024年7月10日に発表した。

 米ロックウェル・オートメーションは、産業機器を対象にした自動化用ソフトウェアなどを開発・販売する企業。現在、産業機器だけでなく、工場全体の自動化・自律化を図るための製品群の開発に取り組んでいる。工場の自律化について、米ロックウェル・オートメーション アジア太平洋地域社長のスコット・ウールドリッジ氏(Scott Wooldridge)は、次のように説明する。

 「顧客ニーズに応える製品は日々変わっていく。その変化に対し毎回、1から工場を再構築するのではなく、生産システムそのもの設計にAI(人工知能)を適用し、柔軟性を高める必要がある。これからの工場では、生産プロセスや設備を重視した設計から、データサイエンスに比重を置きAI技術を使った自動設計を推進する必要がある。工場のデジタルツインを構築すれば、シミュレーションにより工場の設計や運用方法を事前に検証できる。先進的な顧客は、そうした自動設計に取り組み始めている」

写真1:米ロックウェル・オートメーション アジア太平洋地域社長のスコット・ウールドリッジ(Scott Wooldridge)氏

 自律化を実現するためにAI(人工知能)技術も利用する。そのためのロードマップでは、AI技術の適用領域を現場側から(1)センシング、(2)制御、(3)製造管理の3つに分類する(図1)。

図1:米ロックウェル・オートメーションが描く自律化工場の実現に向けたAI導入の3領域

 ロードマップにおいてはこれまでに、センシング領域に属するソフトウェアセンシング用の「FactoryTalk Analytics LogixAI」を2020年に発売している。物理的なセンサーの設置が難しい機器などを対象に、他の変数などから必要なセンシングデータを予測する。そして今回、異常検知など状態分析用の「FactoryTalk Analytics GuardianAI」を投入した。

 GuardianAIは、エッジ側で機器の稼働データから通常状態から外れた状態を検出するための仕組みである。(1)組み込みと(2)ユーザー定義の2つの異常検出に対応する。前者は、機器のセンシングデータから通常状態を認識し、そこからの逸脱を警告する。後者は、異常な状態を予めラベリングし、それに合致した際に警告する。いずれも監視対象は、同社製アプリケーションが組み込まれている最新のポンプとブロワー、モーター。今後は現場に既に導入されている従来機器や、コンプレッサーなど別の機器にも対応したいという。

 AI技術の適用をセンシング領域から着手する理由をウールドリッジ氏は、「工場内にある資産をクラウドに接続し、複数の工場あるいはグローバルに点在する工場に対する制御を可能にするためだ」と説明する。近く、センシング領域の「VisionAI」、制御領域の「TwinAI」、製造管理領域の「OptimAI」を、それぞれ発表する予定だ。

 各領域のAI技術を搭載したソフトウェアは、同社が提供する製造業向けデータ分析基盤「FactoryTalk Analytics」と連携して動作する。FactoryTalk Analyticsは、エッジからのデータの収集・蓄積と分析・可視化の機能を提供し、設備総合効率(OEE:Overall Equipment Effectivenes)の改善やダウンタイム低減のための意思決定を支援する。

 一方、複数の工場などに対する制御システムを設計するためのソフトウェアである「FactoryTalk Design Studio」に対し、生成AI技術によるアシスタント機能「FactoryTalk Design Studio Copilot」を開発してもいる。制御用ソフトウェアを生成やPLC(プログラマブルロジックコントローラー)へのソフトウェアの書き込みにまで対応するという。現在「200人のユーザーがベータ版を使用している」(ウールドリッジ氏)という。