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日本の建設業はデジタル技術の採用が遅く人材育成・獲得策も不十分、米Autodeskの調査

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年8月27日

「日本の建設業におけるデジタル技術の採用数は平均2.9種。アジア太平洋地域の6カ国中で最も低い」−−。こんな調査結果を3次元CAD(コンピューターによる設計)ソフトウェアを開発する米Autodeskが2024年7月18日に発表した。

 米Autodeskの『建設業界におけるデジタルアダプションの現状』(2024年)は、デジタル技術の導入状況や効果などに関する調査結果。アジア太平洋地域(APAC)6カ国の建設・エンジニアリング企業933社の経営者や責任者、マネジャーを対象に、米Deloitte の豪州法人と協力して調査した。

 建設業界が使用しているデジタル技術の数は、6カ国全体で「5〜10種類のデジタルテクノロジーを使用」が41%で最も多かった(図1)。全平均は5.3種である。最も導入数が高かったのはインドの7.9種。これに対し日本の個数平均は2.9種で、6カ国中、最も低かった。企業の総支出に占める割合も日本は14%で最も低く、トップはインドの28%だった。日本の建設業がデジタル技術の導入と投資に消極的だと考えられる。

図1:建設業界が導入しているデジタル技術の個数(出所:米Autodesk)

 現在使用しているデジタル技術として最も多かったのは「データ解析」の48%だった(図2)。それに「施工管理クラウドソフトウェア」(43%)、モバイルアプリ(40%)、「プレハブ工法とモジュール工法」(40%)が続く。

図2:現在使用しているテクノロジーおよび計画中のテクノロジー(出所:米Autodesk)

 逆に使用比率が低かったのは、「拡張現実、仮想現実、複合現実」(24%)、「ロボティクスおよび自動化システム」(22%)、「デジタルツイン」(21%)が挙がった。建設プロジェクト全体の効率を高めるための業務基盤の採用が進んでいるものの、先端技術領域では採用が進んでいないのが実状のようだ。

スキル不足は世界共通ながら日本は人材育成・獲得策に遅れ

 デジタル技術の導入障壁になっている要素については、6カ国全体で「従業員のデジタルスキルの不足」が42%で最も多かった(図3)。これに対し、日本では「費用がかかりすぎるテクノロジー」が47%で最も多い。これに「従業員のデジタルスキルの不足」(41%)、「テクニカルスキルに対する不安」(36%)が続く。この上位3要素は、デジタル技術の採用個数がトップのインドでも、順序こそ異なるもののトップ3に挙がる。

図3:デジタル技術導入における障壁になる要素(出所:米Autodesk)

 デジタルスキルの不足につながるスキル獲得の格差解消に対する取り組みとしては、6カ国全体では「既存労働者のスキルアップ」が81%でトップ(図4)。それに「熟練労働者の新規採用」が75%で続く。これに対し日本は、それぞれ66%、58%と、人材育成と外部人材獲得のいずれでも対策に遅れがみられる。

図4:スキル格差に対処するための取り組み(出所:米Autodesk)

 米Autodeskは、「デジタルスキルは需要が高く供給が逼迫している。他業種との競争を余儀なくされるため、建設・エンジニアリング業界では大きな課題になっている」と指摘している。