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CXの向上には顧客対応人材とAIボットなどの最適配置が重要に、米ZendeskがCX領域のAI機能を強化

佐久間 太郎(DIGITAL X 編集部)
2024年8月29日

米ZendeskがCX(Customer Experience:顧客体験)領域への生成AI(人工知能)技術の適用を進めている。同領域の機能の総称となる「Zendesk AI」を2023年5月に発表。具体的な製品/サービスを2024年5月から市場投入している。2024年7月31日の記者会見に登壇した同社APAC(アジア太平洋)地域のCTO(最高技術責任者)であるジェイソン・メイナード(Jason Maynard)氏が現況を説明した。

 「企業がAI(人工知能)技術を活用したビジネスを拡大するうえで特に重要なのは、貴重なCS(Customer Success)人材の有効活用だ」−−。米ZendeskでAPAC(アジア太平洋)地域のCTO(最高技術責任者)を務めるジェイソン・メイナード(Jason Maynard)氏は、こう指摘する(写真1)。

写真1:米Zendesk APAC(アジア太平洋)地域CTO(最高技術責任者)のジェイソン・メイナード(Jason Maynard)氏

 CS人材とは、コンタクトセンターなどで顧客と直接接し対応する人材のこと。そうしたCS人材の有効活用に向けて米Zendeskが用意するのが、CS人材の配置やスケジュールを作成するための「Zendesk WFM」だ。「(顧客からの問い合わせなどについて)長期的な需要を予測し、CS人材のスキルに応じて、どの人材がどこにいるべきかを把握し、彼らの能力を最大限に活用できるようにする」(メイナード氏)という。

 需要予測のためのAIモデルは、顧客数や、季節性、音声・チャット・電子メールなどのチャネル、問い合わせ内容などの履歴データを使って構築する。BPO(ビジネスプロセスアウトソージング)形態での業務管理データも利用する。メイナード氏は、「数週間、数カ月、数年にわたる需要を予測しCS人材個々とチームとしてのスケジュールを作成することで、計画的なビジネス展開を支援する」(同)と話す。

 CS人材を重要視する背景には、「CS人材の定着率に課題がある」(メイナード氏)からだ。「サービス業務の中心は人であるにもかかわらず、CS業務はキャリアを磨くための場所とみられている。チーム内に築かれる組織的な知識の多くは、CS人材がキャリアを重ね新しい職務や仕事に移ってしまうと流出し再利用できなくなってしまう」(同)と危惧する。

 知識の流出防止に向けた機能がAIアシスタントの「エージェントCopilot」である。基本は、社内の知識ベースと連携し、CS人材に有用なコンテンツや回答を提案し、CS人材を支援するための機能だが、メイナード氏は「組織にまたがる知識を結びつけ、それを使って質問に答えたり顧客を助けたりするための情報をCS人材の手元に置くことが、組織としての知識になる」とする。そのことがCS部門全体での品質管理(QA:Quality Assurance)にもつながるという。

人とボットの対応をモニタリングしCS業務の品質を高める

 CS部門の品質向上に向けては、CS人材の通話・会話のログをスコアリングする「Zendesk QA」も用意した。「製品/サービスの説明に適切な言語を使用したか、使用した文法が正しいか、適切な解決方法が提示されたかなどをスコアリングし、改善が必要だと思われる部分をAI技術が特定するCS業務に対するフィードバックや、直接のコーチングの機会が得られるようになる」とメイナード氏は説明する。

 Zendesk QAは、CS人材の対応だけでなく、AI搭載ボット「AIエージェント」のやり取りも分析する。AIエージェントは、2024年3月に買収したAIチャットボット基盤「Ultimate.ai」を元にしたボットで、顧客対応の自動化を可能にする。「注文のキャンセルや商品の交換など、eコマース(電子商取引)において顧客から寄せられる一般的なリクエストの70~80%を自動化できている」(メイナード氏)という。

 生成AIに利用する大規模言語モデル(LLM:Large Language Models)としては、Zendesk自身のLLMのほか、「Amazon Bedrock」(米AWS製)と「Claude 3」(米Anthropic製)も利用できるようになっている。

 メイナード氏は、「大規模言語モデルはコミュニケーションが上手く、質問に的確に返答できる技術だ。一方でCS人材は、優れたコミュニケーターであり問題解決能力に長けた人々である。だからこそ生成AIとCS人材を組み合わせることが、CX(Customer Experience:顧客体験)業務の変革に大きなインパクトを与えられる」と強調した。