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地域の災害リスクをデジタルツインで可視化するサービス、TOPPANが開発
地域の災害リスクを、地域に関する種々のデータで構築したデジタルツイン上で可視化するサービスをTOPPANが開発し、2025年3月上旬より提供を開始する。自治体が実施する災害対策や訓練・防災教育などを支援できるとする。2025年3月5日に発表した。
TOPPANが開発したのは、都市の3D(3次元)データに自治体が持つ種々の災害データを組み合わせた地域のデジタルツインを使い、災害発生時のリスクを可視化するサービス(図1)。災害の発生によって変化する被害状況や避難行動を避難者の属性なども考慮し、どのような状況になるかをシミュレーションする。現時点で可視化できるのは、津波と河川氾濫、高潮である。
自治体などは、シミュレーション結果に基づく災害対策の立案や、訓練・防災教育の実施が可能になる(図2)。生成AI(人工知能)技術を使い、災害状況と地域の防災計画などが定める行動ルールから訓練シナリオを生成したり、防災教育用に発災時の様子を再現したCG(Computer Graphics)を出力したりもできる。
サービスは全国を対象に提供する。地域のデータとしては、ハザードマップや、避難所などの防災関連施設の位置、住人の分布と年齢構成などを登録する。
サービス開発においては、2024年9月から京都大学防災研究所巨大災害研究センターと連携し、防災計画や訓練におけるデジタルツインの有効性を検証してきた。今後は、地震や土砂、火災など災害種別を拡大するほか、国土交通省が進める3D都市モデルのオープンデータ「プロジェクトPLATEAU」を活用したデジタルツインの構築にも対応していく。
災害リスク可視化サービスの料金は、自治体が保有する災害関連データを利用する場合で、初期費用が560万円から、年間利用料は保守費を含め140万円である。要件や登録情報数に応じて、地図データやシミュレーション、オプションデータの登録費などが発生する。
TOPPANはこれまでに、津波・浸水の可視化サービス「リアルハザードビューア」や「災害体験VR」など、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術を使った住民向け防災啓発サービスを開発・展開してきた。デジタルツインやVR映像などの防災関連サービスを主に自治体向けに提供し、2025年度に関連受注を含め5億円の売り上げを目標にする。
TOPPANによれば、防災・減災計画の前提になる被害想定はこれまで、過去の事例や経験に基き、人による想像を中心に策定されてきた。しかし近年は、災害が激甚化・複雑化するなど質的に変化し、考慮すべき事項が多岐にわたり、各要因が連鎖的に影響する被害想定を従来のやり方で策定することは限界を迎えており、システム的な解決が求められている。