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愛媛県今治市、河川の1時間後の水位をAIで予測する治水監視システムを開発

DIGITAL X 編集部
2025年2月28日

愛媛県今治市は、河川や水路の1時間後の水位をAI(人工知能)技術を使って予測する治水監視システムをプラント事業などを手掛けるBEMACと共同で開発し利用を開始した。治水対策の負担軽減や初動の準備期間の確保に生かす。2025年2月25日に発表した。

 愛媛県今治市が開発したのは、河川や水路の1時間後の水位を予測できる「治水監視システム」。過去の水位データと気象庁の降雨予測とをAI(人工知能)技術で解析し、深夜帯や天候の急変時にも1時間後の注意・警戒水位を予測し、関係者に通知する(図1)。治水対策の負担軽減や効率向上を図り、初動対応の準備期間を確保する。治水監視へのAI技術の本格導入は愛媛県内の自治体では今治市が初めてという。

図1:「治水監視システム」における1時間後の水位の予測の流れ

 監視システムはまず市内の鳥生地区で利用し、データの蓄積やAI予測モデルの改善などにより予測精度を高める(図2)。2025年度は潮位や堰、ポンプの状況も加味できるようにするほか、今治市以外の自治体にも販売していく。

図2:2018年7月の大雨で冠水した道路の様子(左)と鳥生地区に設置する水位計測器

 今治市の徳永 繁樹 市長は、「AI技術を使って河川・水路の水位を予測するシステムの導入により、初動を早く開始でき業務のリードタイムを確保できる。近い将来には事前放流や事前排水への活用など、防災業務の強化が見込まれる」と期待を話す。

 治水監視システムは、今治市に本社を置くBEMACと共同で開発した。同社は海洋プラント事業を主力とし、海洋データや航海データ、船舶の各種機器の稼働データから事故を予防検知するプラットフォームを開発している。そこでのAI技術やビッグデータの活用ノウハウを生かしたとする。

 BEMACによれば、近年の気候変動は記録的短時間豪雨など、これまでにない水害を発生させ、河川や水路の急激な水位上昇や冠水被害を引き起こしている。一方で、防災の仕組みを担う自治体では、担い手不足や高齢化に加え、技能継承の課題に直面している。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名愛媛県今治市
業種公共
地域愛媛県今治市
課題近年は河川や水路の急激な水位上昇や冠水被害が起きやすくなっている一方で、自治体では防災の担い手不足や高齢化、技能継承などの課題がある
解決の仕組み過去の水位データと気象庁の降雨予測から1時間後の水位を予測できるシステムを開発し、治水対策の負荷軽減や初動対応の準備期間を確保する
推進母体/体制愛媛県今治市、BEMAC
活用しているデータ気象庁の降雨予測と過去の水位データ(潮位や堰、ポンプの状況も追加する予定)
採用している製品/サービス/技術海洋事故の予防検知システムに利用した深層学習(Deep Learning)技術(BEMAC製)
稼働時期--