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森林の植生状態や地形をドローンとAIで取得・可視化するサービス、日立システムズが開始
森林に関する情報をドローンとAI(人工知能)技術を使って取得するサービスを日立システムズが開始した。樹種やサイズ、CO2固定量などを測定し可視化する。人が実際に森林に入るよりも、短期間で安全かつ安価に調査できるとする。2025年3月17日に発表した。
日立システムズの「森林調査DXサービス」は、森林内に入らず植生状態や測量などを実施するサービス(図1)。人が実際に森林に入って調査するよりも、調査時間の短縮、それに伴う人的コストの削減、森林情報の可視化による森林所有者への施業提案の容易化などが期待できるとする。
森林調査DXサービスでは、ドローンを使って得た画像をAI(人工知能)技術で解析することで、単木単位での樹種やサイズ(樹高、胸高直径、立木幹材積)、CO2固定量を推定したり、森林内の作業道や微地形なども捉えた地形図を作成したりする(図2)。
現地情報を入力すれば、主要な人工林ではない樹種にも対応でき、林地の材積生産力を示す「地位」の特定作業にも利用できる。測量では、写真測量だけでなく、LiDARを利用したレーザー測量にも対応する。
サービス提供に先立ち、宮城県女川町や北海道芦別市などで実証実験を実施した。宮城県女川町では、人が立ち入る調査で19人日ほどかかる森林調査が4人日程度で調査でき、業務工数の約8割を削減できたとする。北海道芦別市では、本州の主要な人工林であるスギやヒノキ以外の樹種に対しても9割以上の精度で樹種を識別できることを確認したという。
森林調査DXサービスは、日立システムズが保有する森林調査でのドローン活用やデータ加工・解析に関する専門知識やノウハウを基に開発した。AI解析ソフトウェアにはDeepForest Technologies製を利用している。
今後は、地方公共団体や森林組合などの林業事業体を中心に、全国で地域森林の保護に取り組む企業や団体へサービスを提供していく。本サービスの技術を活用し、カーボンクレジット創出から取引までの支援や海外展開を目指し、サービス内容の拡充を図るとしている。
日立システムズによれば2019年に施行された「森林経営管理法」に基づく森林経営管理制度やカーボンニュートラルの推進などに伴い、適切に整備されていない森林への間伐や保全活動が活発化している。加えて昨今は、森林由来のカーボンクレジットが着目されており、そのための長期的な森林管理計画が必要になっている。
だが、人が立ち入る調査には大きな労力・時間・コストがかかる。傾斜地では転倒や滑落の危険性もある。日本の林業事業体は高齢化と人手不足という深刻な問題を抱えており、素早く、安全かつ安価な森林調査の方法が求められている。