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海外で活躍できるスタートアップを輩出するカナダや豪、スイスの支援策

神戸市が海外スタートアップのインバウンドサポートイベントを開催

かのう よしこ
2025年3月28日

スタートアップの海外進出に向けて各国政府は、海外企業とのマッチング機会を増やすといった支援策を用意・展開している。カナダ、オーストラリア、スイスのスタートアップ担当者が神戸市主催のピッチイベントに登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。併せて、神戸に進出している海外スタートアップも登壇した。

 各国政府や自治体などが、スタートアップの育成・支援に取り組んでいる。神戸市も、スタートアップ育成には積極的な自治体の1つだ。スタートアップの紹介や大手・中堅企業などとマッチングなどに向けた種々のイベントも開催している。

 その神戸市が2025年2月19日、ピッチイベント「各国の顧客ニーズを解決するイノベーションを体感!世界のスタートアップと協業し、新たなビジネスチャンスを探る」を開催した。海外スタートアップのインバウンドサポート施策の一環で、海外スタートアップが持つ先端技術を民間企業が取り入れるきっかけを提供する。加えて、各国が抱える社会課題やビジネス状況を知る機会にもなるとする。

 会場は、三ノ宮駅直結のイベントスペース「アンカー神戸」で、今回は、カナダ、オーストラリア、スイスのスタートアップ育成担当者が登壇し、各国のスタートアップ支援策を紹介した。それに続けて海外スタートアップ4社が登壇し、各社の技術を説明した。

カナダや豪、スイスの支援策から海外に出るスタートアップも

カナダ:大学を中心にAIのエコシステムが拡大

 カナダは、テック系スタートアップの支援策として2013年から「CTA(カナディアン・テクノロジー・アクセラレーター)プログラム」を展開している。カナダのテック系スタートアップがグローバルに活躍する機会の創出を支援する。日本では2019年に同プログラムを開始した。

写真1:カナダは、テック系スタートアップの支援策「CTA(カナディアン・テクノロジー・アクセラレーター)プログラム」を展開する

 日本のCTAプログラムをリードするカナダ大使館 商務官の烏田 朝美 氏は「カナダでは現在「大学を中心としたAI(人工知能)のエコシステムが拡大している」と説明する。

 その中心にいるのが“AI界のゴッドファーザー”として知られるトロント大学のジェフリー・ヒントン教授である。「そこで学びたいと世界中から優秀な学生が集まって来ている。国境や立場を超え、AI技術を学ぶ者として個人がつながっていくことで、大きなエコシステムが作り出されている」(鳥田氏)。

 彼らは「大学スタートアップとしてスピンオフする場合もあれば、GAFAM(Google、Apple、Facebook:現Meta、Amazon.com、Microsoft)などビッグテック企業でテクノロジーをリードする立場になる者も多い」(鳥田氏)という。

 ちなみに鳥田氏は、国内外の大手コンサルティング会社で、各種の国際ビジネスや公共事業の案件に従事してきた。

豪ニューサウスウェールズ州:イノベーション拠点に3000社超が

 シドニーを州都とするオーストラリアのニューサウスウェールズ州は、シンガポールやマレーシアと近しい経済規模であり、最大の貿易国は日本である。同州の政府駐日代表であるデイビッド・ローソン氏によれば、同州は多数のユニコーン企業を有するイノベーション拠点でもある。

写真2:豪ニューサウスウェールズ州には3000超のスタートアップが集まる拠点がある

 脱炭素・グリーンエネルギーやネットワークテクノロジー、宇宙・航空などの分野に強みを持ち、3000社を超えるスタートアップ企業が拠点を置いている。日日本でもデカコーン企業として知られるデザインツールを提供する「Canva」も、その1社だ。

 州政府としては、ワークスペースやネットワーキング、各種情報などの提供、補助金などの制度整備に加え、大学機関による学内ベンチャー支援の充実を図っている。これまでに日本企業とでは、伊藤忠商事、みずほ銀行、三井住友信託銀行、損保ジャパンなどと、環境事業や宇宙産業分野での協業が始まっているという。

 なおローソン氏は、日本で輸入住宅を専門とする独立コンサルタントとして9年間活動したほか、日本の鉱業会社の海外事業に携わったり、オーストラリア国立大学・豪日研究センターに従事した経験を持つ。