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TAKADAグループのTriValue、配送ルートを量子コンピューティングと数理最適化技術で最適化

DIGITAL X 編集部
2025年6月18日

TAKADAグループの物流会社TriValueは、配送ルートの最適化に量子コンピューティングと数理最適化技術を使ったシステムを、同社に出資する伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)と、量子コンピューティングを手掛けるエー・スター・クォンタムとで共同開発した。熟練者が3時間かかっていた配送計画の策定を10分以内に完了できたという。CTCが2025年6月13日に発表した。

 TriValueは物流会社のTAKADAと伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の合弁企業。物流機能とともに、それを支える情報システムの開発・販売も手掛け、それを強みにしようとしている。このほど配送ルート作成システム「OptyLiner」を開発した(図1)。ルートの算出に量子コンピューティングと数理最適化の技術を使用しているのが特徴で、CTC)と、量子コンピューティングを手掛けるエー・スター・クォンタムとで共同開発した。

図1:TriValueがCTC、エー・スター・クォンタムと共同開発した配送ルート作成システム「OptyLiner」の画面例

 OptyLinerは、家具や建材、ネットスーパーなど種々の業種・業態に応じて最適な配送ルートを作成する。車両の積載量や台数、ドライバーの労働時間などの条件に、移動距離や稼働台数、CO2排出量などを最小化できるルートを算出する。全車両のルート計画や、配送する荷物、注文情報を1つの画面に表示するほか、配送伝票をPDF形式で出力する。

 2025年4月2日から5日にOptyLinerの実証実験をTriValueの「さいたまセンター」で実施した。10台の車両で92件を宅配するための配送計画を10分以内に作成できたという。荷主の特性や地域情報を熟知した職員の手作業なら3時間、従来システムでは90分を要していた。加えて空車の抑制により配送車両は9台で済んだとしている。

 条件設定時の計算速度は、従来システムの数分〜20分以上に対し、OptyLinerは5秒で完了したとしている。計算速度が高まることで、受注締め切りを早めなくても、条件の微調整やシミュレーションの繰り返しが可能になる。

 OptyLinerの開発では、TriValueが物流業務の知見と関連データを、エー・スター・クォンタムが量子コンピューティングと数理最適化の知見を提供し、CTCが実際の開発を手掛けた。今後は、共同配送管理や配送データに基づく需要予測などの機能を拡充する予定である。

 OptyLinerは、家具や建材、家電など大型荷物を配送する企業を中心に外販もする。既存の業務システムからの注文情報の取り込みや、データ項目のカスタマイズにも対応する。販売料金は月額20万円(税抜)から。契約期間に応じた基本料金と車両数に応じた従量課金の組み合わせで決まる。3年間で20億円の売り上げを目標にする。

 CTCによれば、物流業界は、ドライバー不足や働き方改革による労働時間の制限、CO2排出量の削減などの課題を抱え、効率的な配送計画の策定が重要になっている。配車やルートの計画は、熟練者が策定しているものの、精度を高めるには時間がかかるため、受注を早めに締め切る必要があり、結果として空車が生じる可能性がある。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名TriValue
業種物流
地域さいたま市(本社)
課題種々の条件を加味した配送ルートの作成時間を短縮し、受注締め切りを早めることなく、移動距離やトラックの稼働台数、CO2排出量などを最小化したい
解決の仕組み配送ルートの算出に量子コンピューティングと数理最適化の技術を使用し、計算時間を大幅に短縮する
推進母体/体制TriValue、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、エー・スター・クォンタム
活用しているデータ配送商品の業種・業態、受注データ、トラックの積載量や台数、ドライバーの労働時間、配送実績など
採用している製品/サービス/技術量子コンピューティング、数理最適化技術
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