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日本は製造DXの導入意欲は高いもののAIなどへの投資に遅れ、米Rockwell Automationの調査

DIGITAL X 編集部
2025年6月19日

日本製造業は工場のスマート化など製造DXに高い関心と導入意欲をもちながらも、そのための投資決定には慎重である−−。こんな調査報告書を米Rockwell Automationが公開している。労働力の高齢化に直面しつつも組織的・文化的な障壁が足かせになり成長の勢いが鈍化しているとみる。同社日本法人のロックウェル オートメーション ジャパンが2025年6月11日に発表した。

 米Rockwell Automationの『スマートマニュファクチャリング報告書』は、世界17カ国で製造部門を持つ企業を対象に実施した調査。2025年版は10回目の調査で、意思決定権を持つ1560人が回答した。

 同報告書によれば、工場のデジタル化を図る「スマートマニュファクチャリング」への技術投資に対し、日本の製造業の94%が「社内外で直面する障害によってDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている」と答えた。前年より3ポイント増加し、調査対象国の中で最も高い割合だった。

 スマートマニュファクチャリングに向けた投資技術としては、クラウド/SaaS(Software as a Service)、AI(人工知能)、サイバーセキュリティ、品質管理が上位に上がる。これらの分野への投資割合は、世界では平均95%と高いのに対し、日本は平均88%だった。

 例えば、AI/機械学習への投資では、世界では95%が「既に投資している」または「今後5年以内に投資することを計画している」。一方で日本は、5年以内の計画を含めてAI/機械学習に投資している割合は89%と世界で最も低かった。AI技術への投資に消極的な企業が世界より多い傾向にある。

 AI技術のなかでも、生成AIと因果推論AIへの投資に絞ると、世界では前年比12ポイント増の54%が投資済みで、今後5年以内に投資する割合も合わせると95%に上る。これに対し日本では、既に投資している割合は43%で世界より11ポイント低い。5年以内に投資するを加えると91%になるものの、世界と比べると最も低い割合になる。

 サイバーセキュリティのためのAI技術においては、世界では49%が2025年中の使用を計画している。前年から9ポイント増えている。だが日本では使用計画がある企業は40%だった。組織が直面する外部リスクとしても、サイバーセキュリティは5位になっている。

 スマートマニュファクチャリングへの投資理由として、世界では48%が「従業員を異なる役割に転用したり、従業員を増やしたりすること」を計画している。日本では、その割合がさらに高く52%になっている。

 「テクノロジーの導入によって魅力的な職場環境を創出する」とする割合も日本は44%で世界でも最もたかい。だが労働力不足の対処として「AIの活用」は39%、「オートメーションの促進」も26%と、世界と比べて低い傾向にある。

 AI技術のユースケースとしては世界では「品質管理」が2年連続で1位になった。50%は、製品の品質管理をサポートするため2025年内にAI/機械学習を利用することを計画している。これに対し日本では「プロセス最適化」が45%で1位、「サイバーセキュリティ」が2位だった。品質管理は3位である。

 これらの傾向を踏まえ、報告書は投資決定スピードの二極化を指摘している。具体的には「スマートマニュファクチャリング技術を導入していないが興味のある」とする企業の割合が、世界の5%に対し日本は14%と、韓国に次いで2番目に高く「6カ月以内に導入を予定する」企業も41%と高水準だった。導入予定時期を「2年以上先」とする企業の割合が7%と世界で最も高い。