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コンタクトセンターでの熟練者の判断思考を可視化する生成AI技術、NTTサービスイノベーション総研が開発
コンタクトセンターの問い合わせ業務において熟練者がどう判しているかを可視化する技術を、NTTのサービスイノベーション総合研究所が開発した。大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を用い、対応履歴から質問と提案の関係性を抽出しフローチャート化する。新人オペレーターの教育用途を想定する。NTTが2025年8月1日に発表した。
NTTのサービスイノベーション総合研究所が開発したのは、コンタクトセンターにおける問い合わせの対応履歴から熟練者の思考や判断の流れを可視化する技術。可視化の結果を新人オペレーターが参照すれば、各種問い合わせ業務において熟練者に近い対応が可能になるとする。
可視化の仕組みはLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)技術を使って開発した。次の3つのステップで可視化する(図1)。
ステップ1 :テキスト化した問い合わせ履歴をLLMに読み込ませ、担当者が投げかけた質問と解決案として示した提案を抽出する。そこから類似項目をグループにまとめ、対応で使われている中心的な「統合質問リスト」と「統合提案リスト」を生成する。
ステップ2 :統合質問リストと統合提案リストを再度LLMに読み込ませ、どの質問の後に次の提案が対応しているのかを構造化し、問い合わせ履歴全体を対応フローとして整理する。
ステップ3 :対応フローの中で、ある質問から次の質問や回答に移る1つひとつの動きを計測する。例えば質問Aに「はい」と答えてから質問Bに遷移したなら、その遷移を1ステップとしてカウントする。フロー全体でステップの出現頻度をLLMに合算させ「頻繁に出現するステップを熟練者が多用している」判断とし、フローチャートにする。
可視化の精度は、公開データセット「FloDial(Flowchart Grounded Dialog Dataset)」を用いて検証した。約2700件のトラブルシューティング対話と、正解のフローチャートが含まれており、開発した技術が生成したフローチャートを正解データと比較したところ、ツリー構造の約9割を再現できたとしている。
生成したフローチャートは、解釈性が高く、人手による修正も容易だとする。サービスイノベーション総合研究所によれば、オペレーターの支援だけでなく、将来的には問い合わせ対応の自動化に利用できる可能性もある。
NTTによれば、問い合わせ業務の現場は、熟練者の不足やノウハウ継承の難しさが課題になっている。新人オペレーターは判断基準が曖昧なまま対応に臨むことが多く、業務品質のバラツキが指摘されてきた。