- News
- 製造
工場や倉庫などのデジタルツインを構築するためのサービス、アクセンチュアが開始
工場や倉庫などのデジタルツインを構築するためのサービスを、米アクセンチュアが提供を開始した。3D(3次元)モデルを使ったシミュレーションにより、製品の設計コストや工場の設備投資などの削減に利用できるとする。2025年12月1日(現地時間)に発表した。
米アクセンチュアの「Physical AI Orchestrator(フィジカルAIオーケストレーター)」は、工場や倉庫などのデジタルツインを構築するためのクラウドサービス(図1)。設備の動画やスキャンデータから3D(3次元)モデルを生成するとともに、既存設備をプラグ&プレイ方式で接続してデジタルツインを構築する。デジタルツインを使ったシミュレーションにより、製品の設計コストや工場の設備投資を削減できるという。
構築したデジタルツインに対しては、現場のレイアウト変更などがあれば、それを検知して自動更新し、常に最新の状況に保つという。生産設備のほか、作業員や車両、資材の動きなども施設内のライブ映像データから取得し、シミュレーションに利用できる。
デジタルツイン上で利用するAI(人工知能)エージェントを提供する。新規の生産ラインの設計やシミュレーション、設置などの工程別に用意し過去の知見を利用できるようにする。XR(Extended Reality:拡張現実)の機能も持ち、デジタルツイン上でのトレーニングや共同作業が可能になるとする。
既に一部企業が利用を始めている。例えば、あるライフサイエンス企業は、バイオ医薬品やワクチンの製造において、保存サイクルと乾燥プロセス全体の温度や圧力などをシミュレーションすることで、逸脱が、いつ、どこで、なぜ発生したかを正確に把握できるようになり、バッチ間のばらつきが減少し製品の保存期間を延長できたという。
ある消費財メーカーは、倉庫業務のデジタルツインを構築し、作業員の動きやピッキング率、コンベヤーシステムを分析することで、スループットのばらつきや非効率なレイアウトを特定。それを基にレイアウト設計や人員配分を見直し、コンベヤーの流れを最適化することでスループットを20%向上させたほか設計の最適化により設備投資を15%削減しとする。
また、ネットワークやデータの環境構築を手掛ける米ベルデンは、Physical AI Orchestratorを使って自動車メーカーの倉庫における歩行者安全対策を開発している。ロボットが協働する生産ラインにおいて、ロボット周辺に「仮想安全フェンス」を設置し、人がフェンス内に入るとロボットが停止または迂回させる。エッジAIを利用しており作業員・車両・ロボットの動きや、設備の経路をセンチメートル単位で検知・モデル化し、例えばフォークリフトが不意に後進するといった想定外の状況にも対応できるようにするという。
Physical AI Orchestratorは、アクセンチュアのAIエージェントの開発・実行基盤「AI Refinery」を、米NVIDIAの産業用デジタルツイン開発基盤「NVIDIA Omniverse」とストリーミング分析ツール「NVIDIA Metropolis」に組み合わせて実現している。
アクセンチュアのインダストリーX本部で米国でのデジタルエンジニアリング&製造サービスを統括するプラサド・サティヤヴォル(Prasad Satyavolu)氏は「Physical AI Orchestratorは工場をソフトウェアで制御し、エージェント型AIとフィジカルAIを製造業の基盤に組み込めるようになった」としている。
