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AI技術の投資対効果を明確に示せる企業は6%に留まる、豪アトラシアンが調査

DIGITAL X 編集部
2026年6月12日

「AI(人工知能)技術のROI(Return on Investment:投資対効果)を明確に示せると確信している経営幹部はわずか6%」--。こんな調査結果を、プロジェクト管理ツールを開発・販売する豪アトラシアンが発表した。多くの企業で、AI技術の導入に伴う評価指標や戦略の未整備が課題となっている実態が明らかになった。同社日本法人が2026年6月10日に発表した。

 プロジェクト管理ツールを手掛ける豪アトラシアン(Atlassian)の調査部門であるAtlassian Teamwork Labが実施したのは、企業におけるAI(人工知能)技術の実態と、その成果を左右する組織運営の要因を分析した調査。米国、英国、オーストラリア、インド、ドイツ、フランスのナレッジワーカー(知識労働者)と経営幹部を対象に、1万2035件の有効回答を得た。

 加えて、米国の売上高上位群「フォーチュン1000」に属する企業のマーケティング、人事、IT、ソフトウェア開発部門などの経営幹部25名にはインタビューを実施した。調査期間は、2026年1月から2月となる。

AI技術の導入は進むも、ROI測定や組織活用に課題

 調査結果によると、AI技術の導入によるROI(Return on Investment:投資対効果)について「明確に示せると確信している」と回答した経営幹部は6%に留まった。一方で、58%は「ROIの測定方法が分からない」と回答した。企業がAI技術に投資している中で、その成果を定量的に評価する仕組みや指標の確立に遅れがあることがうかがえる。

 AI技術の導入戦略においては、経営幹部の34%がAI活用における「特定の重点領域なし」と回答した(図1)。導入において全社的な目標や優先順位を明確に定義していない企業が少なくない状況とみられる。

図1:経営幹部がAI(人工知能)技術の導入で重点を置いている領域

 Atlassian Teamwork Labは、こうした戦略不在の状態が重複作業や優先順位の不一致、連携不足を招く要因になっていると分析する。その結果、米国「フォーチュン500企業」では年間推定1610億ドルの損失が生じているという。

 実際のAI活用も、組織内で均一に進んでいない。経営幹部の55%は、AI技術によってチーム間のパフォーマンス格差が拡大したと回答した。また、ナレッジワーカーの85%がAI技術を利用している一方で、日常業務のワークフローに組み込んでいる割合は29%だった。AI技術を「チームメイト」として位置付けながら業務を進めている割合は15%に留まるという。

 それでもAI技術の導入効果については、経営幹部の89%がAI技術によって作業スピードが向上したと回答する。しかし、チーム間のコラボレーションが改善されたという回答は48%だった。AI技術の導入が個人の生産性向上には寄与しているものの、組織全体の連携強化には必ずしも結び付いていない状況がうかがえる。

 AI活用を阻害する要因として、データやナレッジ基盤の整備不足も明らかになった。AIツールの精度を全面的に信頼しているナレッジワーカーは22%に留まり、69%は自社のデータやナレッジ基盤がAI活用に適した状態でないと回答した。学習や参照の対象となるデータ品質の問題が浮き彫りになっている。

成果を上げる組織は「コンテキスト」「ワークフロー」「文化」を重視

 調査では、AI技術を活用して持続的な成果を上げているトップチームの共通項として(1)コンテキスト、(2)ワークフロー、(3)文化、の3つを挙げている。

 コンテキストは、チーム間で明確な目標を共有するとともに、人間とAIエージェント双方がアクセスできる信頼性の高いナレッジ基盤を構築する考え方である。チーム間で目標の整合性が取れなくなる割合が12分の1に低減するとしている。

 ワークフローは、人間とAIエージェントの役割を明確にしたうえで、チーム横断の業務プロセスを設計する取り組みである。AI活用の整合性が13倍向上するという。

 文化は、継続的な学習と実験を促し、人間とAI技術が協働する組織風土を形成する取り組みである。AI技術をチームメイトとして活用する可能性が2.3倍高まるとする。

 Atlassian Teamwork Labはこれらの調査結果を踏まえ、AI戦略を個人の生産性向上からチーム全体の連携品質向上へと移す必要があると提言する。ナレッジワーカーは業務時間の約80%を他者との協働に費やしていることから、AI導入の評価指標も個人単位の効率化だけでは不十分としている。

 そのうえで企業に対しては、一元化したナレッジベースの整備、明確な目標設定による共有コンテキストの構築、人間とAIエージェントの協働を前提としたワークフローの再設計、AI活用能力の格差解消が重要だとしている。