• News
  • 共通

歩行者や自転車の交通事故リスクを可視化する地理空間分析基盤、ソニーネットワークコミュニケーションズが開始

DIGITAL X 編集部
2026年6月15日

歩行者や自転車の潜在的な事故リスクを分析・可視化するための基盤を、ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)が提供開始した。APAS(Advanced Pedestrian-Assistance Systems:歩行者先進安全支援システム)の下、交通事故が発生しやすい場所や状況を可視化し、自治体や自動車関連事業者らが交通安全施策の立案や教育などにつなげられるとする。2026年6月10日に発表した。

 ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)の「APAS Platform」は、道路上の歩行者や自転車による潜在的な事故リスクを算出する地理空間分析基盤。自治体や自動車関連事業者などが、交通事故が発生しやすい場所や状況を可視化し、交通安全施策の立案などにつなげられるという。

 APAS(Advanced Pedestrian-Assistance Systems:歩行者先進安全支援システム)はソニーグループが研究開発を進めている(図1)。その実装基盤であるAPAS Platformでは、歩行者や自転車利用者の人流データと、事故情報や交通量、道路構造などの地理空間データを組み合わせてリスクを分析する。

図1:地理空間分析基盤「APAS Platform」の概要

 分析ための人流データは、GPS(全地球測位システム)端末や、スマートフォンのセンサーなどから収集する。一方の地理空間データは、交通事故情報や交通量、地形、建築物、人口統計データなどを取り込む。分析結果は、ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems:先進運転支援システム)やナビゲーションシステムとの連携、デジタル教材や安全学習マップなどに活用できるとする。

 SNCは特に、通学路における児童を対象に、登下校や放課後での安全向上を目指す。その際、分析対象とするのは、児童の急な飛び出しや歩行時のふらつきといった行動。これを検知したうえで、隣接する車道側のリスクとして変換・記録する。

 分析結果は、交差点や分岐点に相当するノードと、それらを結ぶ道路リンク(道路区間)単位で管理する。車両側からは認識しにくい潜在的な危険要因を、道路ネットワーク上に可視化する。

 データ取得が難しい生活道路や細街路を補完するために、交通量を統計的に逆推計するロジックを採用しているほか、全体の形やつながり方に基づいてグループ分けする「トポロジカル・クラスタリング」を用いる。道路ネットワークの形状や接続関係を基に道路リンクをグループ化し、データが不足する場所の状況を推定する。

 さらに、公園内や学校敷地内の抜け道など、地図データにない動線を推論する「仮想歩道推定機能」を用いて、人の移動経路として分析対象に加える。建築物データなどを活用した「死角検知機能」では、建物や構造物によって生じる視認性の低い場所を抽出できるようにしている。

 SNCは今後、自治体や企業、教育・研究機関と連携し、APAS Platformを活用したサービスの導入や共同研究、教育プログラムの展開を進める。歩行者と自動車、道路インフラを連携することで、交通システム全体の安全向上を目指すとしている。

教育プログラムや産官学連携で交通安全を拡大

 APAS Platformのデータや分析機能を活用したサービスとしてSNCは、学校向け地図アプリ「Smart Safety Map」も提供している(図2)。学校や自宅周辺の交通安全情報を地図上で確認できるほか、GIGAスクール構想で導入された学習端末での利用も想定してオフライン環境にも対応する。生徒が発見した危険箇所なども登録・共有できるという。

図2:学校向け地図アプリ「Smart Safety Map」のヒートマップの例。赤くなるほど危険リスクの高い場所を表す

 また、Smart Safety Mapを活用した探究学習プログラム「わたしたちのまちの安全研究教室」も展開している。児童が通学路や遊び場の危険箇所を調査するもので、全国11校で実施した実績がある。

 産官学連携での取り組みも進める。損害保険ジャパンとは2026年2月から、小学生向け体験型交通安全プログラム「みんなでつくる!次世代型交通安全マッププロジェクト」を開始している。SNCの分析基盤と教育プログラムに、損保ジャパンの交通安全啓発ワークショップを組み合わせる。

 自治体とは東京都西東京市で2026年度から、APAS Platformによる交通安全分析データの提供や交通安全システムの実証を進めている。併せて、独自教材の提供や安全研究教室の実施、児童の見守りのあり方に関する検討を支援している。

 東京大学大学院とは2026年2月、同校教授の樋野 公宏 氏を代表とする都市デザインや交通安全の専門家グループとの共同研究を開始した。福岡県宗像市でAPAS Platformの実証実験を実施している。

 APASの研究開発は、ソニーグループが2019年に開始した。2024年からは、SNCと連携し、見守りGPS端末を活用したAPASの実証実験を進めてきた。APAS Platformは、研究開発や実証で得た知見を基にSNCが開発した。

 SNCによると、ADASや自動運転システムが交通事故の防止に寄与することが期待される一方で、事故発生には、走行する自動車が停止するまでの空走距離や制動距離、建物や道路構造による死角、道路インフラの制約など複数の要因が関係する。特に歩行者や児童の突発的な行動は、運転支援機能向上だけでは防止が難しいケースがあるという。