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産業用ソフトウェアへのAI組み込みと基盤の強化、独シーメンスが戦略を説明
顧客の要望に応えるAI機能を各ソフトウェアへ実装
拡充されたソフトウェア群に、シーメンスはAI技術をどのように組み込んでいるのか。同社 PLM製品担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョー・ボーマン(Joe Bowman)氏は「顧客から寄せられるAI技術への代表的な要望は(1)新人技術者の教育、(2)開発期間の短縮、(3)設計支援の3つだ」と説明する(写真2)。
具体的な声として、電子部品大手の米モレックス(Molex)は、毎年雇用する数千人のエンジニアの研修にAI技術を活用したいと要望。半導体製造装置の蘭ASMLのエンジニアリングチームからは材料評価にかかる時間の短縮、航空宇宙の米SpaceXからは構造設計やモデリング支援への要望があったという。
これらの声に応えるため、シーメンスはXceleratorに含まれる設計・解析・製造管理の各工程にAI機能を組み込んできた。ボーマン氏は「(1)信頼できる成果、(2)よりスマートな実行、(3)より速いエンジンの3つのテーマに注力して投資してきた」と説明する。
テーマ1=信頼できる成果:AI基盤と買収技術の融合
信頼できる成果の基盤になるのが、2026年6月に発表した産業用AI基盤「Intelligence Center X」である(図2)。信頼できる成果を得るには「正確なデータとセキュアな環境が欠かせない」とボーマン氏は強調する。
Intelligence Center Xは、PLMやERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)、社内の業務システムに分散した情報をつなぎ合わせる。そのためにナレッジグラフやオントロジーの技術を組み込み、米Snowflake、米Databricks、米Palantir Technologiesといった外部のデータ基盤とも連携する。
また、アルテア買収の成果として「Graph Studio」と「AI Studio」を統合している。Graph Studioは、種々のデータをリアルタイムに統合し、AI技術が推論する環境を構築するためのツール。PLMソフトウェア「Teamcenter」へのセキュアなアクセスにも対応するという。
一方のAI Studioは、専門知識がなくても業務データから高精度な機械学習モデルを作成できるツール。「統計的なプロセスコントロール(Statistical Process Control)で大きな力を発揮する」とボーマン氏は説明する。またローコード開発基盤「Mendix」では「あらかじめガードレールを敷いた開発環境で、統制の効いたAIエージェント開発環境も提供」(同)する。
Intelligence Center Xの活用成果として、製薬大手のグラクソ・スミスクライン(GSK)は、クロスドメインのインサイト(洞察)を得るためのリードタイムを90%削減した。また板ガラス製造のブラジルVIVIXは、生産上の問題解決にかかる時間を90%短縮したという。
AIアシスタントと処理スピードの向上で現場を支援
テーマ2=よりスマートな実行:AIアシスタントの導入と活用
よりスマートな実行の代表例は、ユーザーを支援するAIアシスタントである。3D(3次元)設計向けの「Designcenter Copilot」は「PoC(Proof of Concept:概念実証)ではなく本番環境で、直近30日間(発表会当時)でも50万回以上の利用回数を数える」(ボーマン氏)とする。
また、PLM向けの「Teamcenter Copilot」では「1000人の新規ユーザーのシステム運用を効率化し、導入から定着までのオンボーディング期間を50%短縮した」(ボーマン氏)実績がある。新人技術者の教育ツールとしての貢献もする。
3D設計ソフトウェア「Designcenter」とTeamcenterの連携を強化する企業には米Metaがある。同社はスマートグラスの開発・製造で、部品や図面の情報を管理。それらデータを「設計から量産までの各部門で共有している」(ボーマン氏)という。
実際ジョーンズ氏も、Teamcenterは「ハイテクや電子部品業界を中心に導入が進んでいる」強調する。同様の動向は、統合型の製造オペレーション管理サービス「Opcenter」でも見られるという。
テーマ3:より速いエンジン=処理速度の向上とAIシミュレーション
より速いエンジンへの投資により、ソフトウェアの基本性能も高めている。ボーマン氏によれば「Teamcenterは部品の分類作業にかかる時間を10分の1に、Designcenterは処理速度を50%向上」した。さらに「Opcenterは、製造工程表や電子作業指示の作成時間を10分の1に短縮」(同)してもいる。
また、シミュレーション領域ではAIソフトウェア「Simcenter PhysicsAI」を開発した。過去の解析結果から形状と性能の関係を予測する「代理モデル」技術により「シミュレーション時間を1000倍に短縮」(ボーマン氏)するまでに至った。
ほかにも工場設計を支援するAIエージェント「Eigen」では「自動化設計を2~5倍高速化できる」(ボーマン氏)とするなど、周辺作業の効率を高めるためのAI適用も広げている。

