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産業用ソフトウェアへのAI組み込みと基盤の強化、独シーメンスが戦略を説明

中村 仁美(ITジャーナリスト)
2026年9月4日

工場や製品といった「現実世界」とソフトウェアやAI(人工知能)技術などの「デジタル世界」の統合に向け、独シーメンスは産業用ソフトウェアへのAI実装とオープンな共通基盤の強化を進めている。同戦略に基づく積極的な投資の成果や、産業用AI基盤をはじめとする取り組みの最新について、ソフトウェア開発を担う米Siemens Digital Industries Softwareが2026年7月30日の記者説明会で説明した。

 「工場や製品、インフラといった『現実世界』と、ソフトウェアやデータ、AI(人工知能)技術といった『デジタル世界』を一体で扱えるようにすること。我々はコア戦略を変えていない点を強調したい」--。独シーメンスの産業用ソフトウェアを担う米Siemens Digital Industries SoftwareでCRO(最高収益責任者)兼グローバルセールス&カスタマーサクセス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントを務めるボブ・ジョーンズ(Bob Jones)氏はこう話す(写真1)。

写真1:米Siemens Digital Industries Software CRO(最高収益責任者)兼グローバルセールス&カスタマーサクセス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのボブ・ジョーンズ(Bob Jones)氏

 戦略の要となるポートフォリオが「Siemens Xcelerator(シーメンス・エクセラレーター)」である。PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)システムやシミュレーション・製造管理などの各ソフトウェアを共通の基盤の上につなぐ。

 基盤は、他社製のツールや自社が保有する既存システムとも連携できるようにするオープンな仕組みである。企業は「自社の環境に合わせて必要な機能を選んで組み合わせられる」(ジョーンズ氏)という位置付けだ。

SDVやライフサイエンス領域に大きく投資

 シーメンスはコア戦略の実現に向け「(1)包括的デジタルツイン、(2)ライフサイクル・インテリジェンス、(3)適応性(Adaptive)の3つの柱に焦点を当ててきた」(ジョーンズ氏)

 デジタルツインでは「20年以上にわたって投資をしてきた」とジョーンズ氏は強調する。すでに、製造プロセス、電機・電子、ソフトウェア、機械などの分野で活用実績があるという。ライフサイクル・インテリジェンスは、製品の企画から設計、製造、保守に至るライフサイクル全体のデータを、一元的かつ安全に管理・活用する仕組みである。

 適応性の観点からは3つのポイントがある(図1)。

図1:適応性(Adaptive)の3つのポイント

●ポイント1=Deploy anywhere :自社サーバー上のオンプレミス、クラウド、工場や機器などのエッジ側いずれの環境でも同じ技術をそのまま実装できること
●ポイント2=Built to scale with you :ニーズに応じて拡張でき、SMB(Small and Medium Business:中小企業)から大企業までが同じ技術基盤を使えること
●ポイント3=Open by choice :既存のレガシーシステムや競合他社のシステム、サードパーティー製のAIツールなど、多様な選択肢と組み合わせられること

 これらの柱を具現化するため、実際に巨額の投資も実行している。具体的な領域では「SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア定義車両)分野には過去数年間で280億ユーロを投じたほか、ライフサイエンス分野やシミュレーション技術には2025年だけでも160億ドル以上を投資した」(ジョーンズ氏)とする。

 近ごろの代表的な投資例が、M&A(買収・統合)によるソフトウェアと機能の拡充だ。2025年に実施した米アルテアエンジニアリング(Altair Engineering)の100億ドルの買収では、構造解析や電磁界解析、AIシミュレーション技術を製品群に取り込んだ。

 また同年には、創薬など研究開発ソフトウェアの米ドットマティクス(Dotmatics)も51億ドルで買収した。これによりライフサイクル・インテリジェンスをライフサイエンス分野に拡大した。ジョーンズ氏は「バイオ製薬会社トップ50のうち、45社が当社の技術を採用している」と成果を話す。