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【COMPUTEX 2026:総括編】AI市場の中核を担う台湾は、半導体製造の先へ次なる布石を打つ

野々下 裕子(NOISIA:テックジャーナリスト)
2026年8月31日

台湾は、AI(人工知能)ハードウェアの生産を支えるサプライチェーンの中核として存在感を高め、次なる領域にAIデータセンターやAIドローンへと成長を広げる。年々世界からの注目度を高める「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日、台湾・台北)」は、33カ国1500社が約6000ブースを出展する史上最大規模の開催となった。講演には主催者や政府要人、団体関係者らが登壇し、AI市場の拡大による台湾経済への波及を強調した。

 台湾・台北市の複数会場で開催された「COMPUTEX 2026(台北国際コンピューター見本市)」(2026年6月2日〜5日)は、「AI Together(AIと共に)」をテーマに「AIコンピューティング」「ロボティクス&スマートモビリティ」「次世代テクノロジー」の3分野に焦点を当て、33カ国から1500社が集まり、約6000ブースを構える史上最大規模の展示会となった。来場者も昨年の約8万人から大幅に増え、世界152の国と地域から11万人以上が参加し、来場者数では日本で開催される「CEATEC(会場:幕張メッセ)」を上回る勢いを見せる。

AI市場を支える台湾サプライチェーンの厚み

 勢いの背景には、過去3年間で年平均30〜50%以上のペースで成長を続けるAI(人工知能)市場において、不可欠となる半導体やサーバー、データセンターなどの生産で台湾のサプライチェーンが重要な地位を占めている事情がある。

 AI技術の頭脳である半導体の製造ではTSMCがほぼ独占の状態にあり、サーバーの製造では鴻海(Foxconn)、Quanta Computer、PegatronといったEMS(電子機器受託製造)企業が上位に並ぶ。COMPUTEXは、こうした企業を中心にAIインフラを支える関連技術製品が一堂に会する機会になっている。

 台湾は国を挙げてCOMPUTEXを支援しており、6月2日の開会式には頼 清徳(Lai Ching-te)総統をはじめとする政府要人が出席した。

 オープニングで登壇した主催者TAITRA(Taiwan External Trade Development Council:台湾貿易センター)会長のジェームズ・ホアン(James Huang)氏は「AI技術は新しい文明のはじまりであり、ツールから主体的な存在へと進化を遂げた。COMPUTEXも技術展示会ではなくなり、AI技術と人、さらに台湾と世界が共存する未来へつながるAIハブへと変貌した」と述べ、COMPUTEXの存在感の高まりを強調した(写真1)。

写真1:TAITRA(台湾貿易センター)会長のジェームズ・ホアン(James Huang)氏

 COMPUTEXの拡大を見るように、AI技術は実際に台湾経済を成長させている。台湾証券取引所(TWSE)会長兼CEO(最高経営責任者)のシャーマン・リン(Sherman Lin)氏によると「世界の半導体産業受託製造において台湾は市場の65%を占め、パッケージングやテスト市場でも約50%を占める。関連企業の従業員採用も増え、AI以外の分野までを含めて市場全体が拡大している」という。

 TWSEを通じたAIエコシステムへの投資熱は世界的な関心の高まりとともに拡大し、台湾株式市場の規模は今年5月の時点で、時価総額にして約5兆ドル(約813兆円)を超え、グローバルで5番目の規模に躍進した。IPO(新規公開株式)は資金調達やグローバル化を通じた成長のきっかけになることから、台湾は次世代AI半導体関連企業への支援を重点的に進める。実際、2026年に新規上場申請を予定する40社のうち、約4割をAI関連企業が占める。

プレハブ式コンテナでAIデータセンターの工期を短縮

 COMPUTEXの展示傾向も、この数年で様変わりした。かつて中心だった組み立てPCやゲーミング関連の出展は減り、製造業、自動車、医療、スマートシティなどあらゆる業界と融合するAI関連の割合が増えた。そこでは先進技術そのものよりも、実装レベルの先端技術を具体的な導入事例と併せて紹介している。

 特に今年は、より高い計算力を必要とするエージェントAIなど、次世代AI向けの半導体やサーバーが相次いで発表された。そして、それらを運用するAIデータセンターやAIファクトリーといった、インフラ構築のためのサービスも見られた。

 例えば鴻海のブースでは、米NVIDIAが発表したAI基盤「Vera Rubin」をベースに、電機大手の台湾TECO(東元電機)らと共同開発するハイブリッドデータセンターが公開された(写真2)。サーバーラックを設置するデータセンター部分と、発電や冷却などのインフラ設備をプレハブ式のコンテナモジュールとして配置し、設営までの工期を短くする。運用に合わせてインフラを増設しやすいのも利点だ。

写真2:鴻海(Foxconn)をはじめ複数企業がプレハブ式コンテナのハイブリッドデータセンターを発表

 プレハブ式コンテナを利用したAIデータセンターは同じく、電源機器製造の台湾デルタ電子も発表している。800VDC(直流給電)の高圧電力と液冷冷却システムを統合し、工場で事前に組み立てるモジュール設計により、工期を従来の60%に短縮するという。

 台湾企業以外では、デジタルインフラ向け電源管理システムや冷却ソリューションを提供する米Vertiv(バーティブ)が、次世代AIデータセンター向けサービス「Vertiv OneCore」を展示した(写真3)。プレハブと現地施工を組み合わせ、輸送と作業の負担を低減する。柔軟性が高く既存のシステムとシームレスに統合し、将来的に新しいAIサービスが登場した場合にも対応するとしている。

写真3:AIデータセンターを効率良く運営する電源や冷却システムが求められている