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エージェント型AIプロジェクトは2027年末までに4割が中止、ガートナーが説く回避策
業務時間の短縮だけでは経営陣は納得しない
AIエージェント活用に期待する成果は、生産性向上とビジネス価値の創造にある。「月に業務時間が数時間短縮できた」と報告するだけでは、経営陣は納得しなくなっている。空いた時間を従業員がどう生かすかが問われている。
確実な成果を出すためには「2つのアプローチがある」(林氏)とする。1つはボトムアップ型で生産性向上を図るアプローチだ。日々の業務効率化で削減できた時間を新たな価値を生む業務へ意図的にシフトさせる。
例えば、ある不動産会社では物件情報の収集や資料作成、物件案内のチラシ作成などの業務にAIツールを活用し、作業時間を3分の1に短縮した。これによって生み出された全社で約12万時間を路上営業など顧客接点に割いた。顧客との直接対話やフォローアップに振り向けた結果、不動産在庫の販売期間を大幅に短縮し利益増につながったという。
もう1つは、経営層によるトップダウン型だ。中期経営計画や事業戦略から重要課題を抽出し、AIツールが解決手段として有効な対象を絞り、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)へのインパクトや実現性などで課題の優先順位を付ける。そして、ピンポイントでAIツールを活用する。「ROIC(投下資本利益率)ツリーで、経営にインパクトのあるAIユースケースを探し出す手もある」と林氏はいう。
例えば「在庫回転率の悪さ」が課題であれば、そこに特化したAIツールをピンポイントで導入し、原価低減や売り上げ向上に直接コミットさせる。DX/IT部門がゼロからユースケースを考えるのではなく、経営陣が事業課題の解決にAIツールを組み込む強いコミットメントが求められる。
林氏によれば、AIツールの導入はITプロジェクトから経営改革へと進展している。「どの業務をAIツールに任せ、人間は何に集中するのか」という全社的な業務の再設計(BPR)であり経営改革の理念だという。まずは「運転できる車を選ぶ」(林氏)。導入候補サービスが有するエージェント機能を分解し、各機能のメリットとリスクを把握し、採否と展開方法を定める。
次に「ステアリングやブレーキの限界を理解する」(林氏)。 エージェント管理プラットフォームのガバナンス能力の現状を理解し、無理なリスクを取らない。そして「目的地を把握する」(同)。生産性向上なのか、経営インパクトを実現したいのか、期待する成果を明確にし、それに合ったアプローチを取る。それがAI技術活用の成功への道になる。
田中 克己(たなか・かつみ)
IT産業ジャーナリスト 兼 一般社団法人ITビジネス研究会代表理事。日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任。2010年1月にフリーのIT産業ジャーナリストに。2004〜2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。2012年10月からITビジネス研究会代表理事も務める。40年にわたりIT産業の動向をウォッチしている。主な著書に『IT産業崩壊の危機』『IT産業再生の針路』(日経BP社)、『2020年 ITがひろげる未来の可能性』(日経BPコンサルティング、監修)などがある。