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シェアリングエコノミー×インバウンドは地方創生の切り札になるか(後編)

九州シェアリングサミット2018から

錦戸 陽子(インプレスR&D、タテグミ)
2018年8月9日

シェアリングエコノミーを地域の視点で語り合う市民向けイベント「九州シェアリングサミット」(主催:九州シェアリングエコノミー推進協会)が開かれている。の大きなテーマは、インバウンド獲得につながる「地域連携」。前編では、福岡市で5月12日に福岡市で開かれた第1回の概要をお伝えした。今回は、熊本市で7月18日に開かれた第2回のサミットから、議論の一部を紹介する。記事中の所属・肩書きは、いずれも開催当日時点のもの。

写真1:九州シェアリングサミットの第2回は、熊本市にあるスマートひかりスクウェア(NTT西日本熊本支店)で開催された。

 熊本市でのサミットでは「インバウンド観光客の集客×シェアリング事業での受け皿つくり」をテーマに、主にデジタルマーケティングによる集客と、その受け皿が議論された。

インスタ映えだけでは、もう不十分に

 今やFIT(個人旅行客)が主流になったインバウンドの獲得には、「インスタ映えだけでは不十分。一貫した戦略に基づきデジタル施策を継続することが不可欠である」とアドバイスするのが、インバウンドマーケティングを手がけるBEYOND代表の道越 万由子氏だ。

 道越氏は、「『旅前(たびまえ)』『旅中(たびなか)』『旅後」(たびあと)』の各過程でSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を活用することにより、大きな広告費をかけなくても成果を出せる」とした(写真2)。

写真2:BEYOND代表の道越 万由子氏(手前)と、地域交流型の学生寮を手がける九州熱風法人よかごつ代表の大堂良太氏

 「インバウンドやゆとり世代のニーズをとらえ、地域資源を生かした体験型サービス企画を地方創生につなげよう」と語るのは中小企業基盤整備機構 理事の堺井 啓公氏。堺井氏は「“点”として磨かれているサービスを“面”として展開するための仕組みとなる『地域サービス統括会社』の発足」を提案する。

 ただし、そこでの自治体の位置付けについては賛否が分かれた。「自治体が積極的に関わるべき」とする堺井氏に対し、来場者からは「自治体に任せてはうまくいかないだろう」という意見が出た。

 地域の独自性を生かす観光企画として期待される仕組みに「着地型観光」がある。現地が企画・立案し、観光客は基本、現地集合・現地解散する。この着地型観光の一例に挙がるのが、シェアリングエコノミー型九州周遊観光サービスモデル「車泊(くるまはく)」である。総務省の「IoTサービス創出支援事業」に採択されている。

 車泊は、南阿蘇や島原市など観光地に近い駐車場が稼働しない夜間の時間帯を使って車での宿泊を可能にするもの。熊本地震の際に車中泊をした人たちから「電源がない」という声が出たことにヒントを得て作られた。QRコードを駐車場の給電装置にかざすと電源を利用できるようになる。

 2017年11月以降、7地域でサービスを提供してきた。九州周遊観光活性化コンソーシアム代表の西岡 誠 氏は、「現在は収集したデータを分析しながら、連携サービスの開拓や、潜伏キリシタン関連遺産のある西九州ルートの開発に取り組んでいる」と話す。