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サイバーセキュリティ対策の根幹は高度な知見を持つ人材、AIや光通信は革新を起こせるか
「Executive Forum 2023 Autumn」のパネルディスカッションから
社会のネット化が進展する一方で、サイバー攻撃が常態化し、さまざまな攻撃が次々と発生している。「Executive Forum 2023 Autumn」(主催:バルクホールディングス、2023年9月19日)のパネルディスカッションに、NTTの代表取締役副社長である川添 雄彦 氏と、イスラエルのセキュリティベンダーCYBERGYMのCEO(最高経営責任者)であるオフィール・ハソン氏、バルクホールディングス代表取締役CEOの石原 紀彦 氏が登壇し、サイバーセキュリティ領域でのAI(人工知能)や光通信の活用などについて意見を交わした。(文中敬称略)
CYBERGYMのオフィール・ハソン(以下、ハソン) :イスラエルのセキュリティベンダー、CYBERGYM CEO(最高経営責任者)のオフィール・ハソンです。当社は、イスラエル電力公社のセキュリティ部門が独立し2013年に設立されました。重要インフラを含めたサイバーセキュリティ分野でのトレーニングプログラムを強みにしています(図1)。
イスラエルは今、ロシアをはじめ、さまざまな国から政府・民間レベルでサイバー攻撃を受けています。中には欧州でのガスや物品輸送の停止に関わる攻撃もあります。そうした攻撃への対策の根幹を支えるのは、サイバーセキュリティに関する高度な知見を持つ人材です。だからこそ当社はトレーニングプログラムの強化を図っているのです。
NTTの川添 雄彦(以下、川添) :NTT 代表取締役副社長の川添 雄彦です。イスラエルは世界中で最も多くのサイバー攻撃を受けていると言われています。私も現地で防衛の最前線を目の当たりにし「ここまでやるのか」と非常に驚かされました。
バルクホールディングスの石原 紀彦(以下、石原) :CYBERGYMとも提携しセキュリティ事業を手掛けるバルクホールディングス代表取締役CEOの石原 紀彦です。現場で実際に起きていることに照らして体系化されたトレーニングプログラムは、とても実践的と言えます。そうした中で最近は、サイバー攻撃にAI(人工知能)技術が与える影響について注視しています。
サイバー空間の攻防はAI同士の戦いになっていく
川添 :これからのサイバーセキュリティはAI同士の戦いになっていくと考えています。攻撃側がAI技術を使うなら、守る側もまたAI技術を使わねばなりません。こうした考えを石原氏にお伝えしたところ「(AI技術の使用が一般化しても)人が不要になるわけではない」話されるなど、イスラエルも同様の考え方を持っていると知り驚きました。
ハソン :AIチャットサービスの「ChatGPT」(米OpenAI製)をはじめ、生成AIについては理解を深め始めている段階でが、生成AIは“諸刃の剣”にもなり得る存在だと考えています。サイバーセキュリティは領域が広く、生成AIを重要インフラの防衛などに使えますが、同時に攻撃への転用という負の側面と常に背中合わせであることも忘れてはなりません。
生成AIを巡っては、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がイーロン・マスク氏などと「人類のために、どうAIを活用していけるか」を議論し、「サイバー攻撃では暗黒面を封じ込めることが必要だ」と伝えています。
AI技術とサイバー攻撃は関係性を深める一方であり、膨大な軍事力を持たなくても参入できる状況にあります。もはやAIは誰でも使える技術であり、個人レベルでも参入できるとも言えるでしょう。
川添 :AI技術の使用は“待ったなし”の状態で進んでいます。今はまだ、人間の経験や勘に頼った対応が続いている面もありますが、「人間にしかできない」と思い込んでいたことが実は、経験の蓄積の上に成り立っていることが少なくありません。
そうした経験はデータに置き換えられるだけに、人間の論理的思考をプログラミングすることは可能であり、(経験という)膨大なデータの蓄積の中にある真理を学んでいくことが、今後のAI技術の進化の方向性だと考えています。