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デンソー、人とロボットの協働に向け生成AIを使った自律型ロボット制御技術を開発
Microsoft Azureの「Azure OpenAI Service」と「Azure AI Speech」でロボットの実行基盤を整備
- 提供:
- 日本マイクロソフト
用途の発掘に向けたオープンイノベーションにも期待
――ここまでの開発をどう評価し、これから何に取り組んでいきますか。
南 自律型ロボットの動作は、いくつもの要因により決定されるため、正しく動作させるためには十分な検証が不可欠です。短期間に、これまでの成果を実現できたのは、検証に伴う変更や実装などの負荷を軽減できる検証ツールを独自に用意できたことが大きいと感じています。
ただ研究開発は始まったばかりで多くの課題も残っています。例えば、生成AIの実行環境は現状、クラウド上にありますが、用途によってはローカルにあるほうが望ましいケースがあるはずです。現時点でも稼働場所を選ばないよう配慮していますが、社会実装に向けては、その柔軟性をさらに高める必要があります。ロボットが実行できることを増やすための各種センサーの追加なども検討が必要です。
阿佐 ロボットが実業務に適用されることを想定し、性能のチューニングやシステムの拡張性、エラー処理などを考慮したアーキテクチャーを採用しました。「とりあえず動きさえすればよい」というのではなく、制御用アプリケーションはすべてコンテナ化することで移植性を高め、サーバー上でも自律型ロボットの側でも動くようにしています。ロボットが何十台、何百台と増えても負荷に耐えられるようにもしています。
成迫 デンソーはモビリティを軸にした社会価値の提供に向け、ソフトウェアファースト」で取り組んでいますが、その成果は社会実装、すなわちリアルな世界への反映が重要だと考えています。自律型ロボットの開発においても、ソフトウェアと連携した物理的なロボットがシステムとして動作し、社会的価値を提供することが重要なのです。
デンソーには、自動車用部品などの試作品を開発できる開発技能職の社員が多数在籍しています。今回のデモシステムの開発においても、彼らが活躍してくれました。AIやソフトウェアの技術者だけでなく、物理的なハードウェアを製作できるメンバーとともにアジャイルチームとして取り組むことで、この自律型ロボットの仕組みを短期間で開発できています。
今後は、適用領域をさらに広げるためにオープンイノベーション(共創)にも取り組もうと考えています。人とロボットが協働する世界を目指し、それを社会的な価値につなげるために、さまざまな領域での使い方を発掘していきたいからです。オープンイノベーションによる価値創出に向け、より多くの企業と連携したいと思っています。
畑﨑 オープンイノベーションでは、さまざまなロボットや利用シーンへの対応が必要なだけに実行基盤の拡張性が、より重要になってきます。今回の実行基盤のアーキテクチャーには、さまざまなロボットに対する制御機能が容易に追加できるよう実装しています。
一方、自律型ロボットのような仕組みの社会実装に向けては、生成AIが生み出した内容をどのようにシステムとして動作検証すれば良いかといった課題の検討が必要になります。マイクロソフト自身はITに関する知見やノウハウは持っていますが、ロボットなどを通じた実世界への価値創生にはデンソー様との連携が不可欠です。オープンイノベーションの取り組みを通じて、実世界とバーチャルの融合を支援できればと考えています。
成迫 自律型ロボットの技術は、モビリティの価値を高めることにも応用できるため、さまざまな領域での社会実装を視野に入れています。机上で考えるのではなく、アジャイルに早く実装し、現場のユーザーの意見を実際に聴きながら開発していくスピードが大切だと考えています。
そのようなソフトウェアファーストでの実装においても世界の先頭集団を走り続けたい。それによって、私たちが目指す「人とロボットが協働し、社会全体に笑顔があふれる世界」の実現に近づきたいと考えます。
今回のプロジェクトは、開始から1年も経たないうちに、コーヒーを入れたりベルを鳴らしたり、人に物を手渡したりと、多くの動作を自律的に実行できる段階にまで到着しました。また一歩、未来に近づけたと強く感じます。