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日本発のIoTプラットフォームに向けたコマツとコニカミノルタの挑戦

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2017年9月25日

コニカミノルタ:脱MFPで課題解決型企業を目指す

 一方、コニカミノルタが世界市場への投入を予定するのが、オフィスや工場などに設置するエッジコンピュータ「Workplace Hub」と、それをつなぎ合わせるIoTプラットフォームである。「企業内に存在する、あらゆるITサービスを統合していくことで、データに基づいて人と人をつなげ、デジタルネイティブな若い世代を含めた働き方などを提案する」と、山名 昌衛 社長は意気込む(写真2)。

写真2:新製品「Workplace Hub」のプロトタイプとコニカミノルタの山名 昌衛 代表執行役社長

 Workplace Hubは端的に言えば、MFP(複合機)にサーバー機能を追加した製品。サーバー部分だけの「Workplace Edge」なども用意する。コニカミノルタも、全世界に200万台が設置されているMFPの稼働状況などはオンラインで収集し、利用量の算定や機械の遠隔保守などに利用している。MFP単体のIoT化には早くから取り組んできた。

 Workplace Hubでは、データを収集・把握する範囲を、MFP単体からMFPが置かれているオフィスや工場といった労働環境にまで拡大することで、「人と社会に効果的なソリューションを提供できるデジタルカンパニーへの転身を図る」(山名社長)のが目標だ。そこでは「業務改革により、複合機で紙を印刷したりコピーしたりしなくなっても構わない」(同)とする。

 例えば、電子メールのログ分析に機械学習やAI(人工知能)を組み合わせ「重要なメールを優先して表示したり、必要な文書の共有をうながしたりと、現場の働き方が最適になるような仕組みを実現していく」(同)。そこでは、同社が光学システム事業で持つ画像分析技術なども組み合わせ、カメラで撮影した画像から人の動きなどを抽出することなども考えられる(図2)。

図2:コニカミノルタは「課題解決型デジタルカンパニー」に向けた変革に取り組む(同社中期事業戦略説明書より)

 Workplace Hub/Workplace Edgeが提供する機能は大きく3つある。(1)企業内のIT環境を管理する「Managed IT Services」、(2)IT環境を運用する「Admin Dashboard」、(3)協働作業のための「Team Space」だ。

 このうち(1)と(2)は、セキュリティやデータマネジメント、ヘルプデスクといったITを利用するための基本機能である。これにより「IT管理に人材を避けなくても、デジタル時代の経営に不可欠なデータの収集・活用に取り組める環境が入手できる」(山名社長)とする。こうしたIT環境があって初めて、(3)のTeam Spaceが提供するコミュニケーション機能やファイル共有機能を使った協働作業が可能になる。

 コニカミノルタ自身は、Workplace Hub上で業種別サービスを展開する。同社が手がけるヘルスケア事業や自社での生産改革などの知見やノウハウを元に、まずは病院向けソリューションを2019年に投入したい考えだ。これと並行して、各種アプリケーション/サービスのパートナー企業による開発・提供をうながす。そのためにAPIを公開し、SDK(ソフトウェア開発環境)も用意する。

現場は自社製品だけでは成立しない

 コマツとコニカミノルタの取り組み共通するのは、IoTによってデータを取得しようとする対象が、自社製品(モノ)の稼働状況にとどまらず、その製品が利用されている環境へと広がっていることだ。建設現場全体、オフィスや工場の全体へと視点が高まっている。自社製品の稼働データの取得でいえば、両者ともIoTが現在ほど注目される以前から取り組んできたことも共通点である。

 自社製品の稼働環境にまで視点を高めた結果、両者が気付いたのが“自前主義の限界”であろう。建設現場で働くのは建機のオペレーターだけではないし、オフィスや工場のスタッフはMFPを使って印刷やスキャンだけをしているわけではないからだ。現場の作業全体や人の働き方を最適に変えようとすれば、他社製品やサービスとの連携は不可欠。であればIoTプラットフォームを先行して構築し、場のまとめ役になろうという戦略である。

 ITの利用者だった企業がIoTプラットフォームの提供者になるという動きは、米GEや独シーメンスなどIoT先駆ユーザーの動きにも重なって見える。

 実際コニカミノルタは、グローバル展開に向けて、米Microsoft、米HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)、英Sophosらとパートナーシップを組むほか、ソフトウェア開発部隊をチェコに新設しソフトウェア技術者の確保にも動いた。山名社長は、「日本の製造業として“ものづくり”の強みを生かしながら、サービスありきのIoT市場での存在価値を高める」とする。

 デジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、日本でも確実に進展し始めている。