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戸田建設ら3社、オフィスの空調を個々人の体感温度で制御する実証実験を開始

DIGITAL X 編集部
2017年9月29日

戸田建設、アズビル、村田製作所の3社は、オフィスなどの共有スペースにおいて、個々人の体感温度に合わせて空調を制御する実証実験を開始したと、2017年9月20日に発表した。一般的な壁面に設置したリモコンによる制御では、「暑すぎる」「寒すぎる」といった状況になりがちなことを解消する。

 実験するのは、3社が共同開発した「申告型空調システム」。オフィスで働くスタッフが「申告カード」を携帯し、体感温度を「暑い」「快適」「寒い」の3つのボタンで自己申告する(図1)。そこから部分的に空調温度を変えたり、部屋全体の温度を変えたりすることで全員が「快適」になるようにする。

図1:「申告カード」で個々人が体感温度を「暑い」快適」「寒い」のいずれかで申告する(戸田建設のプレスリリースから。申告カードの写真は村田製作所のプレスリリースから)

 申告型空調システムを戸田建設とアズビルが、申告カードを村田製作所がそれぞれ開発し、設備設計へのコンサルティングを戸田建設が担当した。申告カードはBluetoothの低消費電力版であるBluetooth Low Energyにより最寄りの空調機器と通信する。

 オフィスにおける空調の課題として3社は、壁面に設置してあるリモコンによる制御では、空調設備の設定温度を最適にしづらいことを挙げている。リモコンまで移動するのが面倒だったり、リモコンの操作が煩雑だったりするためだ。結果、一部の人がリモコンを操作することになり、「暑すぎる」「寒すぎる」といった状況が発生していた。こうしたことは多くの人が体験しているはずだ。

 一方で個々人の体感温度は状況に応じて変化する。例えば、夏季は帰社したばかりのスタッフは「暑い」と感じるが、その要求に応えて設定温度を下げるとオフィス内にいたスタッフにすれば「寒い」ということになる。

 申告型空調システムでは、申告カードからの通知と室温を比較し、申告が一時的なものか継続的なものかを判別し空調機を制御する。具体的には、室温が低い時の「暑い」という申告は個人的なもので一時的だと判断し、申告者に最寄りの空調機の設定温度を一時的に下げ、一定時間が過ぎたら元の値に戻す。逆に室温が高い時の「暑い」という申告は継続的と判断し、すべての空調機器の設定温度を下げる。

図2:申告型空調システムの室温制御の考え方。一時的な申告と判断すれば設定温度を変えた後、一定時間が過ぎれば元に戻す

 実験は、戸田建設の筑波技術研究所(茨城県つくば市)とアズビルの藤沢テクノセンター(神奈川県藤沢市)、村田製作所の長岡事業所(京都府長岡京市)の3カ所で、2018年3月まで実施する予定。3社で実証実験の結果を検証し、2018年10月の実用化を目指す。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名戸田建設、アズビル、村田製作所
業種製造
地域茨城県つくば市、神奈川県藤沢市、京都府長岡京市
課題オフィス空間の空調設定は壁際のリモコンでは個々人に最適化できず、不快に感じることが多い
解決の仕組みオフィスにいるスタッフから体感温度の申告を受け、それに基づいて空調機の全体や部分を自動制御する
推進母体/体制戸田建設、アズビル、村田製作所
活用しているデータ室温と、スタッフ個々人からの体感温度(「暑い」「快適」「寒い」の3種)
採用している製品/サービス/技術申告型空調システム(戸田建設とアズビルが開発)と体感温度を知らせる「申告カード」(村田製作所が開発。Bluetooth Low Energy通信を採用)。
稼働時期2017年9月〜2018年3月までの予定