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日産と兼松ら、EVの利用エリア拡大に向け米カルフォルニア州で実証実験を開始

DIGITAL X 編集部
2017年12月11日

日産自動車と兼松、およびNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が、EV(電気自動車)の利用エリア拡大に向けて、米カリフォルニア州で実証実験を開始した。EVの利用エリアを拡大できるよう、EV利用者の行動パターンを分析し、急速充電器の最適な設置場所の予測などに取り組む。2017年11月28日に発表した。

 今回の実証は、日米が共同で取り組む「DRIVE the ARC」プロジェクトの一環。ARCは「Advanced Recharging Corridor」の頭文字で、カリフォルニアにおいて、海沿いから山間部までの観光ルートを結ぶ急速充電網を指している(図1)。

図1:「DRIVE the ARC」プロジェクトのホームページの例

 実験場所となるカルフォルニア州は、2025年までにZEV(Zero Emission Vehicle:動力源から排出ガスを一切出さない車)を150万台普及せるという目標に掲げている。州内で一定台数以上の自動車を販売するメーカーに一定比率のEVやPHV(プラグインハイブリッド車)などの販売を義務付ける「ZEV規制」を導入したり、EVへの優先レーン通行を許可するなど、米国で最も自家用EVの販売台数が多い州である。

 一方で、EVの利用が、充電インフラが比較的整備されている都市部での近距離移動が中心など、限定的な使われ方にとどまっているという実状がある。今回の実証実験は、EVの利用範囲が州内全域に広がるように、充電インフラのあり方や誘導方法などを検証する。

 実験に向け日産と兼松は、海沿いのモントレーから山間部のレイクタホまでの区間に25カ所55基の急速充電ステーションを設置した。2016年11月14日に準備を始め2017年11月14日に完成した。同時に、2016年11月からEVのドライバー向けに提供しているスマホアプリ「DRIVEtheAR」をバージョンアップし、日産の自動車情報サービス「NissanConnect」とのデータ連携を可能にした。NissanConnectの「GDC(グローバルデータセンター)」は、日産が世界各国で販売するEVの走行状況をデータベースとして持っている。

図1:日産らが設置した急速充電器の設置場所を示す地図(「DRIVE the ARC」プロジェクトのホームページより)

 実験では、約2年をかけて、GDCが持つ走行データも使いながら、利用者の充電行動などを分析しながら、急速充電網の最適化を図っていく。EVの利用距離をどれだけ拡大できるかについても評価分析していく。これらにより、EVの普及と利用拡大モデルを確立するのが狙い。

 日産は現在、EVの累計販売台数では世界トップシェア。兼松は、自動車のM2M(Machine to Machine)/IoT(Internet of Things:モノのインターネット)ビジネスの開発を進めており、EVやEV充電に関わるリアルタイムデータビジネスやビッグデータビジネも検討している。両者は、それぞれの技術を組み合わせることで、EVドライバーの行動パターン分析や、EVドライバーに向けた誘導情報サービスの事業化なども検討する。

 今回の実証についてNEDCは、「実証による成果が米国内のみならず、他の国や地域にも適用され、EVの利便性が世界各地で格段に向上し、EVのさらなる普及につながることが期待できる」としている。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名日産自動車、兼松、NEDO
業種製造、サービス
地域米カリフォルニア州
課題EVを普及させたいものの、現状は充電インフラが比較的整備されている都市部での近距離移動など、限定的な使われ方にとどまっている
解決の仕組みカリフォルニア州内に25カ所55基の急速充電ステーションを設置し、EVの走行状態や充電パターンなどのデータを収集・分析し、急速充電器の設置場所の最適化を図るなどで、EVドライバーの利便性向上を図る
推進母体/体制日産、兼松、NEDO
活用しているデータEVドライバーの走行や充電などの行動データ、および日産が世界各地で販売したEVの行動データ
採用している製品/サービス/技術日産が提供するEVドライバー向けスマホアプリ「DRIVEtheARC」や、自動車情報サービス「NissanConnect」など
稼働時期2017年11月から約2年間