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米Partners HealthCare、心疾患患者の再入院リスクを「根拠を説明できる」AIで予測

DIGITAL X 編集部
2017年12月27日

アメリカの医療団体Partners HealthCareが、心疾患患者の再入院リスクをAI(人工知能)で予測できることを確認した。予測結果に応じて退院後のケアプログラムを実施すると、従来に比べて患者の再入院を2倍以上の防げることも判明した。システムを構築した日立製作所が2017年12月12日に発表した。

 Partners HealthCareは、米マサチューセッツ州の複数の医療機関が参加する医療団体。医療機関が連携を取りながら医療サービスを提供している。日本同様に、高齢化に伴う医療費の増大が課題になるなかで、高品質な医療サービスを低コストで提供することに取り組んでいる。

 心疾患患者を対象とした「CCCP:Connected Cardiac Care Program」が、その一例。Partners HealthCareによれば、心疾患は慢性化しやすく管理が難しいため、65歳以上の患者の入院理由として最も多い。そのためCCCPでは、退院する心疾患患者の脈拍など病状を示すデータを収集し、病状悪化や再入院を防ぐためにメールや電話で助言してきた。

 今回、Partners HealthCareは、患者の再入院率を下げるために、日立製作所が開発したAI(人工知能)で心疾患患者のデータを分析した。結果、患者の再入院リスクを高い精度で予測できることが確認できたという。

 具体的には、AIの予測結果に応じて、Partners HealthCareが退院後のプログラムを適切に実施したと想定してシミュレーションしたところ、従来に比べて2倍以上、患者の再入院を防止。1人当たりの年間医療費をおよそ80万円(7000ドル)削減できることが分かった。

 日立が提供したAIは、深層学習を利用したもの。入院患者への処置や投薬、病歴などの医療情報を学習するほか、医療ガイドラインから過去の医療判断要素を学習し、退院する患者が30日後に再入院するリスクを予測する。

 また、従来の深層学習では分析に利用した情報と、分析結果の因果関係を説明することが、ほぼ不可能だった。今回、日立が開発した技術では、医師が理解でき、その後の医療行為の参考になる数十の要素を抽出したうえで再入院リスクを予測している(図1)。標準的な統計解析手法も利用し、再入院リスクと、それぞれの判断要素が分析結果にどの程度影響を与えているのかも算出する。

図1:予測結果だけでなく、その根拠も示すことで、退院後の助言などの効果も高くなる

 予測モデルの構築と効果検証には、Partners HealthCareが保有する、2014年から2015年に入退院した心疾患の患者およそ1万2000人の電子カルテデータを利用した。日立は今回開発した技術を応用したシステムを医療機関だけでなく、健康保険事業者や救急サービス、製薬会社などに提供することを目指す。

 Partners HealthCareと日立製作所は、今後の入退院患者をAIで分析し、その効果を検証し、医療従事者による評価を進めて、実際の医療現場への投入を目指す。

デジタル変革(DX)への取り組み内容
企業/組織名米Partners HealthCare
業種医療・健康
地域米マサチューセッツ州ボストン
課題再入院リスクが高い心疾患患者に再入院防止を目的としたプログラムを提供してきたが、再入院リスクをさらに下げる必要があった
解決の仕組み深層学習を利用した予測モデルと標準的な統計解析手法で、患者の医療情報などを分析
推進母体/体制米Partners HealthCare、日立製作所
活用しているデータ患者の医療情報、医療ガイドラインの情報
採用している製品/サービス/技術独自AI技術(日立製作所製)
稼働時期不明